環境省は15日、世界自然遺産に登録された鹿児島県の奄美大島と徳之島にのみ生息する国指定特別天然記念物アマミノクロウサギの2022年の交通事故死が、過去最多だった昨年の78件を上回るペースで増えていると明らかにした。8月末で73件に上り、同省は「これまで事故が少なかった夏にも多く発生し、更新する可能性が非常に高い」としている。
奄美で54件(前年61件)、徳之島は最多だった18年と同数の19件が既に確認された。奄美ではこれまでと同じ島西部の湯湾岳周辺道路や県道湯湾新村線で多発、徳之島は新たに県道花徳浅間線で急増した。
昨年の同時期は計40件。今年は例年少ない6~8月も多く、同省の鈴木真理子・希少種保護増殖等専門員は「観光などで通行車両が増えたことが影響した可能性がある」と分析する。同省はクロウサギの活動が活発になる11月まで、啓発活動を強化する。
2島は近年、クロウサギの事故死が増加傾向にあり、世界遺産委員会は昨年7月の登録時に対策強化を要請。同省や県、地元市町村は、多発地帯でクロウサギが道路へ飛び出すのを防ぐ柵やネットを増設する方針を示している。