<社説>教員の多忙化深刻 地域との連携を深めよう

 本来の仕事である授業の準備だけでなく、現場の教員は、さまざまな業務に追われている。研究者や市民団体の全国調査では、教員の半数が休憩時間を取れず、精神疾患による休職者は5千人前後の高止まりが10年以上続いている。 県内でも同様の状況があり、教員の働き方改革は待ったなしだ。スポーツ庁や文化庁は運動系、文化系両方の部活動を地域に委託するよう提言しており、県内でも本格的な議論が始まった。

 子どもたちの教育環境を充実させるためにも、教員の働き方を見直すだけでなく、地域の人材活用をはじめ県民全体で取り組む必要がある。

 県教育庁によると、2016年度の県内の教員の病気休職者413人のうち、精神疾患での休職は163人、39%だった。19年度は419人中190人(45%)、20年度は389人中188人(48%)と年々割合が増えている。

 病気休職の背景には長時間労働があると考えられる。19年4~12月に過労死ラインとされる月80時間以上の残業をした県立学校教員は月平均で243人いた。要因として部活動指導、事務・報告書作成などが挙げられている。

 一方で学校や教員を取り巻く環境整備は遅れている。公立学校の産業医選任率は全国平均93.1%に対し、県内は全国最下位の68.8%にとどまっている。長時間労働の常態化に伴う悩みがあっても、相談しづらい状況に置かれているのが沖縄の教員だ。

 茨城県守谷市は小学校高学年と中学で6校時授業の日を減らしたり、2学期制移行により夏休みを1週間短縮したりするなど独自の改革を進めた。その結果、一つの小学校では平均残業時間が月64時間から31時間に半減した。

 先行事例を取り入れつつ、県内でも研修の簡略化や教員定数の増加など、さらなる施策が求められる。

 一方で長時間労働の要因となっている部活動指導をはじめ、教員の労働環境改善に地域の協力は不可欠だ。

 ただし受け皿となる地域スポーツクラブや指導者の確保といった課題が残る。保護者にはクラブ会費をはじめ新たな負担も発生する。自治体による補助や仲介は不可欠であり、自治体の積極的な対応を期待したい。

 21年度に実施した教員採用試験で小学校の競争率は全国平均で2.5倍となり、過去最低となった。県内は4.1倍だったものの、長時間労働などを背景に、かつてほど人気のある仕事ではなくなっているといえる。

 その中でも強い使命感を持ち教壇に立つ教員は数多くいる。そうした教員が疲弊し、子どもたちに学ぶ楽しさを伝えられなくなるとすれば、人材が育たず沖縄の未来にとって大きな損失となる。

 学校の壁を取り払い、地域に開かれ、地域の人材と協働する学校の在り方を共に考えていきたい。

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