“労組結成” 長崎のアマゾン配達員の訴え 業務増も変わらぬ賃金、経費自己負担…

配達する荷物を車から降ろす大瀧さん=長崎市内

 長崎市などでインターネット通販大手アマゾンジャパンの荷物を運ぶドライバー15人が労働組合を今月結成した。配達現場に同行取材すると、流通量の増大で業務負担が増えたにもかかわらず、雇用者から対応してもらえない苦しい事情がかいまみえた。
 7日午前7時半、大瀧孝洋さん(50)は同市内の集荷場を訪れた。午前中に配る「朝便」として任された配達物は84個。書類など軽い物もあれば、飲料水のペットボトルを詰めた箱もある。サイズごとに並べて軽ワゴン車に積み込み、30分後に出庫した。

配達先の地図が表示されたアプリ

 各配達員は地区を割り振られ、この日は丸善団地や三原など斜面地を担当。スマートフォンの業務用アプリで地図を見て、近くまで運転し路肩に停車。荷物を取り出し、購入者の希望の受け取り方法を確認する。狭い坂道を走り、階段を2段飛ばしで駆け上がる。呼び鈴を押し、住人に手渡した。残暑は厳しく、マスクを付けた顔や体から汗が噴き出る。
 宅配ボックスや玄関前に置く「置き配」希望も多く助かる。「手渡し希望で不在時が1番きつい」。重さ約20キロの荷物を抱えて長い階段を下りたが、住人不在で引き返すことも。「『家の裏口に置いて』など指示があれば助かる」という。
 午後1時ごろ配り終え、いったん集荷場へ戻る。「夜便」を受け取り、午後7時半まで続けた。1日で配ったのは約130個。大瀧さんは「春ごろから荷物の量が増え、下請け会社の管理者に改善を求めたが答えは『ノー』。坂道が多い長崎市の地理的特性も考慮されていない。1日100個前後に戻して」と訴える。

アマゾン配達員の契約イメージ

 配達員はアマゾンジャパンと直接の契約関係はない。アマゾン側が下請け会社に配達を委託し、この会社が個人事業主の配達員と業務委託を結んでいる。しかし実際には、アマゾンのアプリで配達先や労働時間を管理されているという。
 大瀧さんの場合、日当1万5500円。荷物量が増えても賃金は変わらない。1日平均の運転走行距離は約100キロに上るが、ガソリン代は自己負担だ。
 「東京ユニオン・アマゾン配達員組合長崎支部」発足に伴い、大瀧さんは支部長に就任。荷物の量の適正化や経費の支給などをアマゾンと下請け会社に求めている。
 一方、アマゾン側は「ドライバーはアマゾンの委託先配送業者の下で業務を行っており、アマゾンの従業員ではない。ドライバーの雇用・契約や稼働管理、支払いは委託先が責任をもって行っている」としている。


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