【ワクチン接種担い手検討会】実習を実施してきた大阪府薬剤師会の思い

【2022.09.16配信】ワクチン接種の担い手の議論に関して、現場の薬剤師はどのように感じているのだろうか。実技実習を実施してきた大阪府薬剤師会常務理事の堀越博一氏にご寄稿いただいた(以下、ご寄稿)。

今後の有事に「再び“何の準備もしていません”では話にならない」/テクニカルな研修や教育を続けていく必要がある

「新型コロナウイルス感染症の対応を踏まえたワクチン接種・検体採取の担い手を確保するための対応の在り方等に関する検討会」の報告書が発出されたことを受け、薬剤師の受け止め方は様々なことだと思う。当然、多くの薬剤師が「残念」と感じていることだろう。

昨年来「ワクチン接種の打ち手に薬剤師を!」と多くの薬剤師が待望した。2021年5月頃には、インターネットで実施された約2万4000筆の署名を河野ワクチン担当相(当時)へ提出される動きを見せ、その後同氏からも「薬剤師による接種を検討する」と発言がなされた。
大阪府薬剤師会としても、日本薬剤師会の研修プログラムの策定を受け、複数回に渡り装着型上腕部筋肉内・皮下注射シミュレーター(きんちゅうくん II)を用いた実技実習を実施してきた。本研修を実施するにあたって当然ながら担当役員で議論してきたわけだが、機器の購入云々の議論の際に、府薬で購入するか大学で持っているものをお借りするか、といった議論がなされた。結果として多くの大学で、シミュレーターを所持していない、という実態が明らかとなり、府薬で購入し研修を実施していくこととなった。

さて、今般の議論ののち「人体への注射・採血を業務として担っている」職種が、医師・看護師以外の接種の担い手の対象として上がり、薬剤師はその対象から外れた。この点に関しては、私見ではあるが、当然と言えば当然の流れではないかと受け取っている。対象となった職種は、そもそも業務内で「注射・採血」をしており、教育も受けているからだ。

その点、現在の薬剤師は当然「注射・採血」の実務にあたったことはない。また、同時に薬学教育の中でも手技等について十分に教育を受けていないであろうことは、前述のシミュレーターを多くの大学で所有していないことからも明らかだろう。そもそも、6年制への移行の中で、注射手技の習得については過去に議題にも上がっていたと聞く。学校教育の現場で将来の薬剤師職能を見据えた教育が十分になされておらず、結果として国民のために薬剤師が寄与できる場が増えなかったことに関しては、尚更残念で仕方ない。

薬剤師・薬局での予防的観点におけるワクチン接種は、有用であることに疑いはない。今後、感染症パンデミックが起こらない保証はないし、そこで薬剤師が打ち手となり、薬局でワクチン接種を提供できるようになれば、より充実した公衆衛生環境を国民に提供できるだろう。当然、国の方でも今後も打ち手としての薬学教育・薬剤師教育のあり方は議論されていく。そのときに再び「何の準備もしていません」では話にならず、今後もテクニカルな研修や教育は続けていく必要がある。そして、薬局でのワクチン接種となれば、医科のような設備体制の整備、要は構造設備基準も必須となってくるだろう。

ワクチン希釈充填、ラゲブリオ・パキロビッドパックなどの医薬品の提供、PCR等無料検査事業、抗原定性検査キットの販売・若年軽症者への無償配布、自宅・宿泊療養者対応など、本当に新型コロナウイルス禍での薬剤師の活動には枚挙に遑がない。アンサングなどと言われるが、まさに国民の目に見える形での活躍だったのではないか。身近な「かかりつけ薬局」でワクチン接種を受けたいと国民から思ってもらえるよう、引き続き活動を続けていく。まずはこれが一番大切なことではないか。

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