長崎県内の通園バス運行 緊急点検 統一基準なく現場任せ「行政支援を」

保育士らに見守られて通園バスを降りる園児=長崎市上野町、長崎信愛幼稚園

 静岡県牧之原市の認定こども園の園児が通園バスに置き去りにされ亡くなった事件を受け、長崎県の幼稚園、保育所、認定こども園などでも国の通知に従い緊急点検が始まった。これまでバス運行について国の統一基準はなく事実上現場任せだった。現場からは「行政の支援がほしい」との声も上がる。
 「実際、運行は赤字ですよ」。長崎市琴海戸根町の中央こども園の渡辺力園長(66)はこう話す。遠方からも通園したいとの要望を受け、45年以上前から送迎バスを走らせている。保護者からは保育料と別にバス利用料を集めているが、それだけではガソリンや車検、保険など維持管理費は賄えない。「それでも通園したいと言われたら、迎えに行かなきゃ」と渡辺園長。
 県こども未来課によると、バスは施設が任意で運行し、保護者と「私的契約」を結ぶ形になる。このため国の統一基準はなく、自治体による年1回の監査項目にも含まれていない。補助金もない。ただ昨年7月に福岡県中間市で同様の事件が発生したのを受け、本県では送迎マニュアルの有無なども監査でチェックするようになった。
 長崎市上野町の長崎信愛幼稚園は独自のマニュアルを作成。同乗の保育士は園児を降ろす際、車内を前から後ろまで移動し、居残った児童がいないか、落とし物がないかなどをチェック。運転手も車内を掃除、消毒しながら同様の確認をする。
 同課によると、昨年9月時点で県内の約600施設のうち約3割が通園バスを所有。今回の緊急点検では▽連絡がないのに姿が見えない子どもの保護者への確認▽乗降時の人数確認のチェック体制▽降車した子どもの情報と出欠の情報を突き合わせる体制-などを調査する。
 長崎信愛幼稚園の大橋小夜主幹教諭(41)は「バス送迎は毎日のことだが、他の園と情報共有することはほとんどない。行政による研修やマニュアルがあればいい」と話した。
 県は今月中に点検結果を国に報告し、年内に県市町職員が各施設で実地調査をする。


© 株式会社長崎新聞社