【中原中也 詩の栞】No.42 「童謡」(生前未発表詩)

しののめの
よるのうみにて
汽笛鳴る。

こころよ
起きよ
目を醒(さ)ませ。

しののめの
よるのうみにて
汽笛鳴る。

象の目玉の、
汽笛鳴る。

          (一九三三・九・二二)

【ひとことコラム】「しののめ」(東雲)は夜が明ける直前のまだ暗い時間。「象の目玉」という童謡らしい表現には、汽笛の太く柔らかな響きとともに、心の中で眠り続けるものの目覚めを願う強い思いが感じられます。山口市湯田温泉の錦川通りに直筆原稿を写した詩碑が建てられています。

中原中也記念館館長 中原 豊

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