加入対象にならないのはどんな人? 10月から変わるパート・アルバイト社会保険加入の要件

2022年10月1日から、従業員数が101人以上の企業で働く方も社会保険の加入対象になります。パートやアルバイトで働く人が対象ですが、働き方により該当するかどうかが変わります。あわせて社会保険に加入するメリット、デメリットについて、本記事で解説します。


社会保険加入の対象者はどんな人か?

そもそも社会保険とはなんでしょうか。社会保険とは「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険(40歳過ぎ)」「雇用保険」「労災保険」を指します。そのうち「雇用保険」「労災保険」は労働保険と呼びます。

給与明細にもあるように、保険料を納めるのは「健康保険料」「厚生年金保険料」「介護保険料(40歳過ぎ)」「雇用保険料」の4つで、会社が半分負担(労使折半)しています。「労災保険」は会社が全額支払います。

加入対象者は、原則全員です。代表取締役はじめ、フルタイムで働く人で、正社員かどうかは関係ありません。さらに一定の条件を満たすパートやアルバイトの方も社会保険の加入対象となります。

一定の条件とは次の通りです。
・継続して 1年以上 の雇用の見込みがあること
従業員数が501人以上 の企業で働いていること

この従業員数とは、フルタイムの従業員数+週の所定労働時間が、フルタイムの人の3/4以上の人の合計数となります。

・週の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金が8.8万円以上 ※残業代やボーナス、交通費は含みません
・学生ではないこと

2022年10月からは、条件が2点変更となります。
・継続して 2カ月を超える 雇用の見込みがあること
従業員数が101人以上 の企業で働いていること

(以下は変更ありません)
・週の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金が8.8万円以上 ※残業代やボーナス、交通費は含みません
・学生ではないこと

これにより、パートやアルバイトなどの短時間で働く人の中で、今まで社会保険加入の対象者ではなかった人も、加入対象となる可能性があります。これを「社会保険の適用拡大」と呼んでいます。

社会保険加入の対象にならない人はどんな人か?

一方、適用拡大されてもなお、社会保険の対象にならない人もいます。

従業員数が101人未満 のいわゆる中小企業や零細企業などで働いている
・自身の就業時間は長くても、複数の企業を掛け持ちで働いており、1つ1つの企業では就業時間が短い。
・日雇い労働者

たとえば、従業員数30名の会社の事務員、いくつものスーパーを掛け持ちしてレジ打ちをしている人、期間や場所が限定されているワクチン接種会場のスタッフなどは、社会保険加入の対象とはなりません。

ただし合算し年収130万円を超えた場合、扶養を外れ、国民年金や国民健康保険に入る必要が出てきます。

社会保険に加入するメリット・デメリットは?

半強制的に加入するとなると、少し嫌な気持ちになるかもしれませんが、社会保険に加入することで、次のようなメリットがあります。

1. 公的保険が充実すること

「公的保険」は「老齢」「遺族」「障害」のための保障があります。「老齢年金」は長生きリスクに備えたもの、「遺族年金」は死亡時に残された家族のための保障として備えたもの、「障害年金」は障害状態になってしまったときに備えたものです。

さらに各種給付を受けることもできます。たとえば傷病手当金は、病気やケガで会社を休んだときの手当です。休んだ日から連続して3日間(待期期間)の後、4日目以降支給されます。最長1年6カ月までの期間で、給与額のおよそ3分の2が支給されます。

このコロナ禍で、もし入院することとなってしまった場合や自宅療養期間が長くなってしまった場合でも、生活費や療養費の足しになることでしょう。

今後、出産を考えている人であれば、出産にまつわる手当や給付金を取得することができるようになります。

健康保険から支給されるもので、産休制度があります。ただしくは産前産後休業制度といい、次の給付があります。

・出産育児一時金
子ども1人生まれると、40.8万円支給されます。

・出産手当金
出産日(あるいは出産予定日)前の42日から出産日の翌日以降56日までで、会社を休み給与が支払われなかった期間、給与のおよそ3分の2が支給されます。

合わせて育休があります。育休育児休業給付金といい、こちらは雇用保険から給付されます。

休業開始から180日目(約半年)までは今までの給与の67%、181日以降は半額の50%が支給されます。原則、子どもが1歳になるまでの支給ですが、保育園に入ることができない場合など、1歳6カ月まで延長することができます。

2. 年収106万円や130万円の壁にとらわれず上限なく、働くことができるようになる

年収130万円を超えると、社会保険の加入義務が発生します。

一方106万円は上記にある月額88,000円のことを指します。つまり501人以上の大企業で働くパートさんなどだけが対象となっていましたが、適用拡大することで、101人以上の会社で働く人も対象となります。

コロナで急に休まなければならない人の穴埋めもこの「壁」があると、引き受けにくいことがあったと思いますが、存分に働くことができます。

3. 将来受け取ることができる老齢年金の額を増やすことができる

1.の公的保険が充実することの補足ですが、扶養内の場合、国民年金は支払っているものとして扱われますが、厚生年金保険料は支払っていません。したがって、将来受け取ることができる老齢年金額は、国民年金だけの場合、満額でも年間77万7,800円(令和4年度)のみとなります。月にならすと64,816円です。

しかし厚生年金保険料を労使折半で払うことにより、将来受け取ることができる老齢年金額が厚生年金分、上乗せとなります。

一方、社会保険に加入するデメリットは、社会保険料が掛かり、今までよりも手取りが少なくなることです。

どれだけ働けばよいか?

厚生年金に加入すると、増える老齢厚生年金額は次の計算式で簡単に計算できます。

年収×0.57%×加入見込み年数

たとえば、35歳のパートの主婦、年収110万円、65歳まで厚生年金に加入したとします。
110万円×0.57%×30年間=毎年18万8,100円(月々15,675円)増額します。

年収110万円の健康保険料と厚生年金保険料(東京都の協会けんぽより)で自分が負担する保険料は合計月額は約12,000円、年間144,000円です。

人は何年生きるかも分かりませんから、一概に損得を一言では表しきれません。ただ人生100年といわれるこの時代、将来のための働くことで上乗せして資金を準備していくことが大切だともいえます。

自分がどう働きたいのか、どうありたいのか、家族ともよく話し合って考えてみてください。

参考
日本年金機構 令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大

協会けんぽ 出産手当金

協会けんぽ 傷病手当金

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