福井からのアクセス良好、憧れの北アルプスへ…ルートどう決める?決行・中止の判断は? 燕岳~常念岳縦走編【ふくいのそと遊び】

福井は北アルプスへのアクセスも良好なんです。
予想外の好天にテンションは上がる一方。北アルプス恐るべし。

山歩きが好きになると行きたくなるのは日本アルプス。 なかでも、北アルプスは山岳雑誌をひらけば毎回のように特集が組まれています。夢のような景色、すてきな山荘・・・

名峰ぞろいの北アルプスのなかでも、人気・知名度ともに抜群なのは槍ヶ岳。 穂先と呼ばれる山頂部は名前のとおりのとんがりコーン形。遠くから眺めても「あ、槍だ!」とすぐわかります。

槍ヶ岳への最短ルートは新穂高温泉からの飛騨沢ルート。 その新穂高温泉まで、福井市内から車で3時間半。

そう、福井は北アルプスへのアクセスもいいんです!

ということで、槍ヶ岳レポといきたいところなのですが・・・

今夏、わたしが槍ヶ岳に行ったときのルートは南岳新道を登っての縦走コース。くわえて二日間の山行中は本降りの雨。このコラムで「ぜひお出かけくださーい」とはちょっと言いにくい。

そこで。 ちょっと登山口までは遠くなるのですが北アルプス常念山脈を歩いた山行をご紹介したいと思います。

ただ、先述のとおり北アルプスの一般登山道のルートについては、山岳雑誌各誌をはじめ個人のかたのブログやヤマレコ、YAMAP等にたくさん掲載されていますから、かさねてココでお知らせしなくてもよいような。

ということで、今回は山行のレポートよりもその前。ルート策定と決定にいたるまでに焦点をおきたいと思います。

かぎられた休日。山仲間といつでもお休みのタイミングが合うわけでもない。いざ山の計画をたてても、家族の病気や都合であきらめなくてはならないこともままあります。 そんな諸々をかいくぐっての山行も、お天気がいいとは限らない。しかも今夏は週末の土日のたびに台風の接近情報。日帰り山行でもヤキモキとするのに、まして3日や4日の連休を確保しての泊り山行となれば…。

そんなとき、私がどんなふうに考えて決行・中止を決めているのかをお伝えできたらと思います。

今回歩いたのは「アルプスの女王」と称される燕岳(つばくろだけ、2,763m)、大天井岳(おてんしょうだけ、2,922m)、そして常念岳(じょうねんだけ、2,857m)の3座縦走。入山は中房(なかぶさ)温泉、下山は一の沢、宿泊は大天荘(だいてんそう。大天井岳の山頂直下にある山小屋)。メンバーはK田さん、M田さん、私の女性3人という山行計画です。

目的は「しっかり長い距離を歩きたい」と「燕山荘スタッフのNちゃんを激励する」です(燕山荘とは、燕岳にある人気の山小屋。えんざんそうと呼びます)。

計画のポイントは ① 登山口までが遠い ② ルートの選定 ③ 縦走のため、車をどこに駐車するか、入山と下山口それぞれのアクセスをどうするか ④ 悪天候や不慮のトラブル時はどうするか

4点それぞれを見ていきましょう。

【 ①登山口までが遠い 】 福井市内から中房温泉までは車で約6時間。休憩時間を考慮すると7時間近くの距離です。当日朝から登ろうとすると、福井を出るのが深夜0時や1時になってしまい、睡眠不足の状態で長時間歩かなくてはいけません。前日の夕方出発、当日夜のうちに松本市内に到着して道の駅等の車中泊などで睡眠時間を確保することにします。

【 ②ルートの選定 】 ルートはすぐに決まりました! 槍・穂高連峰は魅力的なルートが豊富。いつもなら大いに迷うところですが、今回は燕山荘に立ち寄ることありきでの計画のため、さっくりと決定です。

第一案が、中房温泉から入山して燕岳、大天井岳を通って槍ヶ岳へ向かうルート。有名な表銀座コースです。この場合は飛騨沢から新穂高温泉に下山するのが最短になりますが、それでも30km超の長歩き。ガイドブックなどでは最低でも2泊3日での計画で臨むルートを1泊2日で考えているので、お天気等条件がよい場合限定です。この案での宿泊先は槍ヶ岳山荘。

第二案が、中房温泉から入山して燕岳、大天井岳。ここまでは表銀座コース。そして大天井岳から常念岳へと周って一の沢に下山するというもの。これは約24km。宿泊先は大天荘。

【 ③車をどこに駐車するか、入山と下山の登山口までのアクセスをどうするか 】 入山と下山の場所が違うため、車までどう戻るかを考えておかなければなりません。山の先輩であるK田さんから、タクシーや車両回送サービスを利用した過去の山歴を伺い、第一案の場合は中房温泉と新穂高温泉との距離がかなり遠いため、下山口まで車を運んでもらう回送サービスを利用※1、第二案の場合はタクシーを予約して送迎してもらい、福井から乗っていった車はタクシー会社に駐車させてもらうことに決めます。 ※1 回送サービスは約20,000円、タクシー利用の場合は35,000円超の見込みでした

【 ④悪天候や不慮のトラブル時はどうするか 】 前述のように第一案は条件がよいとき限定。条件がすこしでも悪ければ第二案。 大雨で増水の可能性が高い場合は、渡渉箇所がいくつかある常念岳とその先の一の沢への下山は断念。宿泊先である大天荘から2日目朝から燕山荘方面にもどり中房温泉に下山。 1日目に荒天で雷がひどい場合は、稜線には出ずに燕山荘に宿泊。さらに条件が悪くて嵐の場合は合戦小屋(尾根の途中にある小屋)までで中房温泉へピストン(引き返す)。

今回は結果としてこの第二案採用と相成りました。

その理由は、なによりもお天気が悪い予報だったから。雨予報だけなら良いのですが、雨にくわえて強風と雷予報。

どちらの案でも、燕山荘から先は標高3,000mの高地稜線歩き。お天気がよければこの上ないルンルンコースですが、ひとたび雨となったら。そして高い山では雨と雷は大の仲良し。高所の稜線歩きでは身を隠す場所がありません。まして槍の穂先は雷のときには登ってはいけません。だめ、ゼッタイ!です。

気象情報はひどくなるばかり。 ルートによっては中止も選択肢にはいってくるのですが、第二案の場合は最悪の場合でも合戦小屋でピストン。合戦尾根には増水の心配をする箇所がないので、とにかく出かけることに。

そうと決まればタクシー会社に電話です※2。 名前と連絡先以外に伝えたことは、 ・福井市から大人の女性3人 ・乗っていった車1台を預かってほしい ・山行予定ルート ・各登山口への送迎希望であること

電話口のタクシー会社の方は、おなじような登山者の要望によく慣れていらして「車1台お預かり1回1,000円※3」「2日目の迎えは、常念小屋のところが電波があるから、そこから電話してください」「お天気等で迎えにいく場所や時間の変更があってももちろん大丈夫です」とスラスラと対応いただきました。 ※2 南安タクシー有限会社さん(長野県安曇野市、24時間対応 予約専用TEL 0263-72-2855)にお願いしました ※3 山に入っている間、1日でも3日でも、とにかく1回の預かりで1台1,000円(税込)とのこと。鍵もあわせてお預けするシステムでした

そしてウキウキと出発。

結果として、この山行のあいだ、ずっと「荒天」ならぬ「好天」にめぐまれました。1日目の夕方、17時すぎから30分間ほど少量の雨が降りましたが、大天荘のなかでくつろいでいたので「あ、雨だなあ」と思っただけ。

お天気等が好条件だったため、第二案そのままの3座縦走しての一の沢下山となりました。

レインウェア上下を着こんで大汗かきながら、もちろんガスガスで景色なんてなにも見えない。そんな山行を覚悟していたので、もうもう2日間ずっと「えーーっ!晴れてくれてるよーーっ」「空が・・・空が青い」「風がさわやかすぎるぅ」「この景色をみることが叶うなんて(涙目)」とどんな瞬間も喜び炸裂。 感情をぐるぐる、グイグイと振り回してくれる山。 ツンデレの極み。

■今回のおまけ

前回、泊り山行のときに持参するポーチの中身をお知らせしました。 その追記のなのですが、この写真を覚えていらっしゃいますでしょうか。

ウェットティッシュ、クレンジングシート、汗拭きシート。 こういったものは、ジップロックなどジッパー付きの袋に個別に入れてくださいね。 ザックのなかで思わぬ方向から圧がかかって、中の水分がかなりしみでるんです。 封をあけていない新品ならだいじょうぶ?と思って試してみたことがあるのですが、新品でもシール部分からしっかりしみでてました。 ぜひ「クレンジングシート類は個別に」でお出かけください。

朝夜は涼しく、虫の音が耳にここちよい季節になりました。 いよいよ雪山!!と心が浮き立ってしまうワタクシですが、その前に秋の山!

  山が紅葉で色づくようすを『山粧う(やまよそおう)』と表現するそうです。 秋の粧いをまとった山々へ、皆さまどうぞたのしくお出かけに、そしてお元気に帰っていらしてください。

(登山用品店「遊山行」=福井市田原1丁目8-2 服部佐和子)

© 株式会社福井新聞社