アメリカ仕込み!?の街づくり 広島都心「カミハチキテル」

スクラップ&ビルドを繰り返し、変わりつつある広島…。

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そんな中、紙屋町・八丁堀エリアでは、一風変わった装いで「まちづくり」のための社会実験が行われています。

これ、実はアメリカ・ポートランドをお手本にしているようで…。

え? ポートランド? 知らない…? 「全米一住みやすい街」とも言われ、おしゃれな飲食店が集まることで知られる街なのです。

そこで、きょうのテーマは、『アメリカ仕込み!?の街づくり 広島都心「カミハチキテル」 市民も参加』

広島市の中心部で展開されている「カミハチキテル」の取り組みでは、通り過ぎるだけだった歩道がおしゃれな雰囲気に変身し、基町クレド前にもコロナ禍でもディスタンスをとって、ゆったりくつろげるスペースができていました。

こうした社会実験を行っている団体「カミハチキテル」は、民間企業や行政、大学など、広島都心に関わるさまざまな団体が参画する官民連携のまちづくりプラットフォームです。

取り組みとしては今回で3回目ですが、単発のイベントというわけではなくて、1つの目標に向かってつながっています。それを支えているのが、「ナイキ」の景観デザインを手がけた会社です。キーワードは、「トランジットパーク構想」。

広島市中心部の相生通り。1日から三越広島店の向かい側の空き地を借りて作られた「カミハチキテル」のイベントスペース「ツカノマテラス」です。

代表の 若狭 利康 さんに聞きました。

カミハチキテル 若狭 利康 代表
― 大きな絵ですが、これは何?
「これは、壁画なんですが、SUIKOさんというアーティストに新しい広告の形として書いてもらった」

作品名は、「トーラスピーク」。トーラスは宇宙をイメージする形、スピークは発言者を意味するそうです。8月中旬に完成しました。アートで街づくりに関心をもってもらおうというものです。

カミハチキテル 若狭 利康 代表
― そうして見ると、まずお店が出ていますね。
「これは、週替わりで2つのお店を出していただいて…」

この日はリゾットコロッケの店とコーヒー店が出店。そのそばに置かれた直径7メートルの円形のいすとテーブルでゆっくりすることもできます。

若狭 利康 代表
「これは、現代美術館さんのワークショップとして作っていただいたのです」

企画したのは、改装中の広島市現代美術館。講師となったのは、フランス出身の木工家具作家「2m26」の2人。そして、実際に制作したのは、ワークショップに参加した子どもたちです。

参加した子ども
「楽しいです」

― どんなところが?
「木材から作って、設計。線を引くところから自分でできるので」

2m26 セバスチャン・ルノーさん
「とてもすばらしいことだと思います。子どもたちが何かを作っているという場面は、子どもたちが一緒になって都市を作っていくという活動にもつながる」

できあがった憩いの場は、近くで働く人たちにとって、どんな印象なのでしょうか?

近くで働く人
「本当に近くなんですが、オフィスの中から外に出て、コーヒーを。光の下でランチできるのはすごく憩いの場。ずっとあってほしいなと思います。期間限定ではなく、こういう場所が続いてほしい」

カミハチキテルの社会実験は、これまでにも2度、実施されています。

2020年には、同じく相生通沿いでバス停前の停車スペースにウッドデッキを設置。そこにベンチや飲食店を構えてくつろぎの場を設けました。停車スペースを埋めてしまうと、停車するバスが1車線をふさぐことになりますが…。

カミハチキテル 若狭 利康 代表
「実際やってみると(バスの)渋滞はあまり起きなかった。成功だった」

カミハチキテルは、来月、三越前の停留所でも同様の取り組みをする予定で、実験結果を今後の街づくりにつなげたい考えです。

若狭 利康 代表
「実際、通りを見てみると、早足で交う人が多く、ゆっくり歩く感じではない。単なる通過点、そういう場所でしかなかった。広島の顔にしたかった」

単なる通過点ではなく、ゆったりと憩える街へ。そのために目指すのは、「トランジットパーク」だといいます。

「トランジットパーク」とは、この相生通を電車やバスなど公共交通機関の通行だけに限定し、歩行者が集える公園「パーク」にしようという構想です。

カミハチキテル 若狭 利康 代表
「車中心の通りから人に優しい通りを合言葉にウォーカブルな場所にしたい。この場所が広島のビジネスマンにとって過ごしやすい場所に、通過点じゃなくてまた行ってみたい、またここで仕事してみたい、そんな雰囲気」

そんな街づくりのためにアドバイスを続ける専門家集団が、アメリカはポートランドに拠点を置くデザイン会社「PLACE」です。

ポートランドは、「全米で最も住みたい街」「最もおいしいレストランが集まる都市」とも評され、いまや世界中から街づくりのモデル都市とされる存在。

PLACEは、そのポートランドの街づくりやナイキの本社敷地の景観デザインなど、設立から12年の間に世界各国で250のプロジェクトに取り組んできた強者で、地域の意見を取り入れながら計画を進めることを得意としています。

カミハチキテルとも相生通りの理想のイメージパースを制作しました。コロナ禍のため、オンラインのみのやり取りが続き、このたび、ようやくの来日です。

PLACE アーバンデザイナー ディラン・モーガン さん
「この場を実際に自分の目で見ることができて、とても感動しています。この通りがこれくらいにぎやかで、いろんなことが起こっているというのが、なかなかわからなかった」

広島のプロジェクトを担当するディランさんです。通りを歩いていて、沿道の木に注目しました。

ディラン・モーガン さん
「ここには街路樹があまり多くないので、特に夏の暑い日はすごく暑いんだなと実感をもって体感しています。もっと緑のたくさんあるような通りに向かっていくといいのかなというふうに思います」

PLACEが、これまで手がけてきたプロジェクトでは安らぎを与える「緑」を大事にしているということでした。

PLACE ゼルカ・キャロル・ケケル 共同代表
「ものすごく交通量もあるし、車の音もすごく聞こえるし、とにかく今は車のための空間、車のための通りなんだということを実感しながら歩いています」

一行は、滞在中にカミハチキテルの参加団体らと意見交換を続けるほか、17日はこの「ツカノマテラス」で一般市民が参加するワークショップを行い、相生通りの未来像を描いて行く予定です。

ゼルカ・キャロル・ケケル 共同代表
「どういうふうな街づくりをしていきたいか、そういうのを聞いたうえで、われわれがいなくなった後も長く続くような何かすてきなものを持ち続けるような街にしていければ」

― 戦後77年が経ち、今、広島市内の建物も多くが老朽化し、建て替えの時期を迎えています。1つひとつの建造物が集合して街を作っていくわけですから、これから何年間かの決断が、今後100年の広島の魅力を方向づける大切な時期に来ています。

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