拉致被害者、特定失踪者5人の川口市「担当設置を検討」 大使館への呼びかけ支援も 市長、議会で答弁

川口市役所=埼玉県川口市青木

 埼玉県川口市は北朝鮮による拉致被害者や同被害が強く疑われる特定失踪者の救出へ向けた啓発活動やキャンペーン活動の体制を強化する。奥ノ木信夫市長が15日の定例市議会で前原博孝市議(自民)の一般質問に答弁し明らかにした。

 前原氏は拉致被害者や特定失踪者の家族や支援者でつくる「拉致問題を考える川口の会」の代表を務めるが、問題解決を国際社会に訴えるために北朝鮮と国交のある大使館に呼びかける活動への市の支援も求め、市長は「支援していく」とした。

 同市では1978年6月に北朝鮮により拉致された田口八重子さん=当時22歳=のほかに、大学1年生だった藤田進さん(当時19歳)ら特定失踪者が4人いる。

 この日の一般質問で、前原氏は藤田進さんの弟、隆司さん(64)が北朝鮮と国交のある50カ国の大使館を訪ねて拉致問題解決での協力を要望する活動を行ってきたこと、イタリア大使館では「拉致問題を訴えに来た日本人はあなたが初めてだ」と言われたエピソードを紹介。「隆司さんは病に倒れ療養中だ。考える会として各国大使館に拉致の実情を訴える活動を模索している」と語り、市民活動への支援や担当課の設置など市の体制強化を要望した。

 これに対して奥ノ木市長は「考える会の活動を支援するとともに、市に専門の担当を置くなど体制についても検討する」と答弁し支援を約束した。

 在京大使館に対し、有事の際は拉致被害者を北朝鮮にある大使館で保護してほしいと訴えた藤田隆司さんの活動は、今年5月に隆司さんが出版した「北朝鮮よ兄を返せ・特定失踪者実弟による手記」(ハート出版)で紹介された。北朝鮮と国交のある国が50カ国もあること、国際社会へ訴える方策として有効ではないか、と注目された。

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