<南風>言葉の力

 日英両語のバイリンガル詩集「Youth―青春」を英語学院創立10周年を記念して出版した。私が18歳~20歳までの3年間で書いた自由詩が元である。英語塾を始めてから、それらの詩を自ら英訳して25編を精選し、英和対訳の見開きとした。若き日の拙い詩が今の若者に共感してもらえるか、懸念はあった。

 T高校のM君は恵まれない家庭に育ち、世の中を恨み、荒れた生活をしていた。担任のK先生から贈られた筆者の詩集をM君は読み込み、自己の生き様を反省し、前向きに力強く生きることを決意した。「生命は無上の宝である/この世に人として生まれ存在していること/『生きる』こと自体が素晴らしいことだ」の一節から「在ることの喜び」をタイトルに2000年度全国定時制生活体験発表大会に出場した。発表でM君は詩集の言葉、「希望は青春そのものである」「希望は人の持ちうる最高の宝だ」「希望のある限り人は成長する」などの言葉を引用し、自分も希望と目標を持ち、力強く生きると決意表明。見事、沖縄県初の文部大臣賞を受賞した。

 また、A子さんは中3の時、友人の紹介で学院に入塾した。気が弱く何事にも消極的だったという彼女は学校の先生の勧めで英語弁論大会に出ることになり、私の個人指導を求めてきた。彼女は詩集の中の一編「強く生きよ・母の祈り」に感銘を受け、自分も作者のように、何があっても弱い自分を乗り越えて、「強く生きる」と決意。それをタイトルに英語でスピーチし県大会で1位入賞、東京で開催された全国大会でも沖縄初の金賞を受賞した。その後、彼女は何事にも積極的に取り組み、東京大学に現役で合格した。

 当初の懸念に反し実に多くの若者から感動の言葉が寄せられた。純真な若き日の詩の言葉は時を超え、現代の若者の共感を呼んだ。

(澤田清、澤田英語学院会長 国連英検特A級)

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