メクル第661号 速いぞ!最高時速260キロ 「西九州新幹線」23日いよいよ開業

走行試験で初めて長崎県内を走った「西九州新幹線かもめ」。右奥が長崎駅方面=5月10日、長崎市宝町

 9月23日、佐賀(さが)県武雄(たけお)市と長崎市を結ぶ「西九州新幹線(しんかんせん)」がいよいよ開業します。どのくらい交通の便がよくなるのか、新幹線が通る駅周辺の風景はどんなふうに変わるのか調べてみました。

 流線形のノーズ

 「西九州新幹線」とは武雄温泉(おんせん)駅―長崎駅間の66キロの路線名のことです。福岡(ふくおか)市の博多駅-長崎駅を結ぶ九州新幹線長崎ルート(全長143キロ)の一部になります。
 これまでの特急列車は有明海沿(ぞ)いを通りましたが、西九州新幹線は大村湾(わん)近くにルートを設定(せってい)。そのうち約6割(わり)がトンネル、約1割が橋と、できるだけ真っすぐ走れるようにして、幅(はば)が広い専用(せんよう)のレールを敷(し)きました。新幹線が高速でも安定して走行でき、乗り心地も快適(かいてき)なのには、こうした理由があります。

流線形のノーズが特徴の「かもめ」=大村市、大村車両管理室

 車両は先端技術(せんたんぎじゅつ)が詰(つ)まった新型のN700Sが導入(どうにゅう)されます。先頭車両のノーズ(鼻)と呼(よ)ばれる先端部は、博多駅-長崎駅の在来線(ざいらいせん)の特急列車、通称(つうしょう)「白いかもめ」と比(くら)べてもかなり長くなっています。この流線形により空気抵抗(くうきていこう)や騒音(そうおん)を減(へ)らすことができ、最高時速260キロと特急の2倍もの速さで走れるのです。
 この車両は「西九州新幹線かもめ」と命名され、特急列車は博多駅―武雄温泉駅間で「リレーかもめ」として残ります。

 対面で乗り換え

9月23日開業時の九州新幹線長崎ルート

 西九州新幹線で長崎駅から博多駅に行く場合は、武雄温泉駅で特急に乗(の)り換(か)えが必要です。同じホームで新幹線から特急に移動(いどう)する珍(めずら)しい「対面乗り換え方式」なので、3分もあればOK。博多駅までの所要時間は約1時間20分と、特急に比べ約30分短縮(たんしゅく)されます。料金は特急より460円高くなります。

 駅周辺も変ぼう

 県内で新幹線が停車する長崎、諫早(いさはや)、新大村の3駅では、駅舎(えきしゃ)だけでなく周辺のまちの再開発(さいかいはつ)が進められています。
 長崎駅周辺では駅西側に大型会議施設(しせつ)「出島メッセ長崎」と高級ホテルがすでに開業。駅東側にはJR九州の新駅ビル(地上13階建て)のオープンが控(ひか)えています。長崎市は「100年に1度の変革期(へんかくき)」として、駅周辺だけでなく街全体の魅力(みりょく)アップに力を入れています。
 大村市は新大村駅、長崎空港、高速道路のインターチェンジが5キロ圏内(けんない)に集まる高速交通の拠点(きょてん)となります。駅から北に約2.5キロの竹松町には新幹線の車両基地(きち)ができました。
 諫早駅東側には、店舗(てんぽ)やオフィス、ホテル、マンションなどが入る複合(ふくごう)型再開発ビル2棟(とう)が新設。周辺では複数のマンション建設も進み、定住人口の増加(ぞうか)にも期待が高まっています。
 10月からはJR九州、長崎、佐賀両県による大型観光PRキャンペーンが展開(てんかい)されます。島原半島など県内の観光地も宿泊客(しゅくはくきゃく)を呼(よ)び込(こ)もうと意気込んでいます。

 フル規格(きかく)に期待

 九州新幹線長崎ルートについては、全線で新幹線車両が走る「フル規格(きかく)」の早期実現(じつげん)を求める声もあります。乗り換えが不要で、時間短縮効果(こうか)も大きく、乗客にとってはさらに便利になります。ただ、建設費が増(ふ)えるため、国と関係自治体の間で話し合いが続いています。

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