きょう しまくとぅばの日 アリウミークリウミーして一冊に 豊かな「重に語」 次代へ

 毎年9月18日は「しまくとぅばの日」。「しまくとぅば」の普及、継承を図ることを目的に、沖縄県条例が制定されている。しまくとぅばは沖縄の文化の基層であり、心のよりどころ。年々、「しまくとぅばを使う人が減り、消滅の危機にある中、地道にこつこつと継承に取り組んでいる人を紹介する。

 県沖縄語普及協議会の会長を務める国吉朝政さん(82)は、「ニーブイカーブイ(眠気に襲われること)」や「ピリンパラン(ぺちゃくちゃおしゃべりする様子)」など、ウチナーグチには同じか似た音・意味を繰り返す言葉が豊かにあることに気づき、言葉を書きためている。集まった言葉は約600語。辞書のようになった資料を前に「若い人に使ってもらいたいけど、どうしたらいいかねー」と、「アリウミークリウミー(あれこれ思い悩むこと)」している。

 国吉さんは日頃からウチナーグチの収集に取り組み、「ゆんたくゐんたく箱(ばく)」として編さんしている。繰り返す言葉は、「暮らしぬ中の一語集(ちゅくとばなー)」「同音異義語」に続く、同シリーズ第3弾「暮らしぬ中ぬ重(かさ)に語(くとぅば)」としてまとめた。言葉と日本語訳を載せるだけでなく、例文を付けたのが特徴だ。

 グートゥミートゥ(対のもの) 「くぬ靴やグートゥミートゥやあらんしが、まーんじが、ばっぺーたらやー(この靴はふぞろいだが、どこで履き違えたのかね)」

 サーラナイサーラナイ(よどみなく流れる様子) 「くぬ仕事やサーラーナイサーラナイっし、せーきらんねーならん(この仕事はさっさと片付けないといけない)

 「学問的な資料ではなく、使ってもらうのが目的」と、例文は日常生活をイメージした。

 国吉さんの両親は教員だった。教員は標準語励行運動の推進役で、子どもの頃、母親は家庭でも標準語を使おうと提案したが父親の反対で却下された。以来家庭ではずっとウチナーグチを使う。

 国吉さんは「組踊にしても歌三線にしても、言葉がないと成立しない。ウチナーグチはウチナー文化の肝心要だ」と強調。「しまくとぅばの日」に言葉を守り伝える決意を新たにした。 (稲福政俊)

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