海外ETFが閉鎖、運用危機も−−投資信託とETFのリスクの違いとは?

天才女性ファンドマネージャーとして知られるキャシー・ウッド氏が率いるアーク・インベストメント・マネジメントのETF(上場投資信託)は、独自のリサーチ力を駆使して「破壊的イノベーション企業」を選定し、市場を上回る成績を目指しているのが特徴です。主力の海外ETF「アーク・イノベーションETF」(ARKK)は、電気自動車メーカー・テスラ(TSLA)へいち早く投資したことでも知られています。コロナ禍からの株価回復局面で急上昇し話題となりましたが、その後のウクライナ侵攻や米利上げ加速懸念により、組入銘柄の株価が大幅に下落したことで運用危機にみまわれました。

上場している投資信託であるETFが運用危機や閉鎖に見舞われると、投資家にはどのような影響があるのでしょうか? 今回は投資信託とETFについて、おもに上場廃止などのリスクにおける違いを解説します。


投資信託とETFとの違い

ETFとは「Exchange Traded Fund」の略で、日本語では「上場投資信託」(上場投信)といいます。1990年にカナダで上場されたものが世界初といわれており、日本では実質的に2001年からスタートし、2007年の規制緩和以降に多様化しつつ普及してきました。

つみたてNISA(少額投資非課税制度)では、国内外の株式に投資できる7本の対象商品(2022年8月18日現在)があり、積立投資による資産形成の手段としても活用されています。これらETFは、投資信託に比べると信託報酬が安い傾向にあり、信託期間も無期限であるため、長期投資やNISAや特定口座などで、毎月積立以外でも活用する場合が多いでしょう。

積立投資家に馴染みのある一般的な投資信託は、1日1回のみ算出される基準価額で売買され、その日の価格がいくらになるかは後からわかる仕組みになっています。一方でETFは基準価額(その日の市場価格の終値)だけではなく、株式市場がオープンしている間にも株式と同様、リアルタイムの価格(流通価格)で売買できます。

ETFは日経平均株価やS&P500などの指数に連動するものだけでなく、債券・REIT(不動産投資信託)・コモディティ(商品)・レバレッジ型・インバース型・高配当株やESGなどのテーマ型への投資も可能です。

【株式・ETF・投資信託の比較】

株式の上場廃止や倒産リスクと投資信託・ETFとの違い

個別株式への投資には、倒産や破たん、不祥事などによる上場廃止など、投資家が大きな損失を被るリスクがあり、投資信託・ETFにも運用を継続できなくなるリスクがあります。詳細は投資信託やETFの目論見書(説明書)に記載されています。

償還リスク

投資信託では、償還日(運用の満期日)が決められているものと、無期限のものとがあります。償還日が設定されているものを購入する場合は、事前に注意が必要です。

償還日が近づいてくると、一定の条件によってそのまま償還を迎えるか、償還日が延長されるかの判断がされます。この結果は、遅くとも償還日より半年前くらい前までにはお知らせがあり、事前に投資家が対応しやすいようになっています。

また、償還日が延長される場合は新しい償還日まで継続できるようになります。なお国内ETFには満期がありませんので、それによる償還もありません。

繰上償還リスク

投資信託では、株式取引は1株などの「株数」という単位で取引されていますが、投資信託の場合は「口数」単位となっており、おもに1万口あたりいくらかで値段(基準価額)が決まります。この口数が一定規模を下回った場合や、ファンドの規模を表す「純資産総額」が減少し継続的な資産運用が難しくなった場合など、繰上償還が投資家(受益者)にとって有利であると認められた場合に、運用を途中で終了することがあります。

一方、ETFは株式と同じように上場廃止となることがあります。上場廃止には、東京証券取引所(東証)の上場廃止基準に抵触した場合や、管理会社(運用会社)の自主的な上場廃止申請による場合があります。

東証はETFの種類によって、細かく上場廃止基準を定めており、そのETFの対象指標(連動を目指す指標・インデックス)とETFの基準価額の相関係数が0.9を下回ったまま1年以内に改善されない場合や、管理会社が業者として認められなくなるような変更登録を受けた場合などがあります。

また、管理会社が自主的に上場廃止する場合もあります。運用を終了(閉鎖)するための繰上償還基準についても、ETFの請求目論見書に定められており、具体的には、受益権の口数が一定数を下回る場合や、対象指標とするインデックスが廃止された場合などがあります。

上場廃止基準への抵触や上場廃止申請となると、まず上場廃止となるおそれのある「監理銘柄」へ、そして取引所による上場廃止決定後に「整理銘柄」へ指定され、やがて上場廃止となります。管理・整理銘柄であっても途中売却は可能です。

ETFの上場廃止については、日本取引所によると、2015年7月5日以来、国内ETFでは55本のETFが上場廃止となってきました。海外ETFもニュースになることが多く、冒頭のアーク社では、透明性で高い評価を受けた企業を投資対象とする「アーク・トランスパレンシーETF」(CTRU)が、2022年7月に同社としては初めての上場廃止(閉鎖)となりました。

投資信託・ETFのリスクを判断する基準は

投資信託やETFにおけるリスクを判断する上で、運用成績の好不調のほかにも「投資家に一定程度の人気があるか」というのも一つの目安となります。わかりやすい判断材料としては、投資信託なら純資産総額が減り続けていないか、ETFなら日々の売買高が少なすぎないかなどに特に注目しておくとよいでしょう。

投資信託であれば、保有している大口の投資家による大量解約や、多勢の投資家による解約殺到など、まともな運用を継続できない状態になる可能性が高まります。市場でリアルタイム取引ができるETFについては、日々の取引(売買高)が少なすぎると、取引中に決定された価格そのものが信頼性に欠ける、取引ごとの価格の変動が対象指標と乖離しすぎるということにもなりかねません。

あまり人気のない商品、マイナーなインデックスに連動する商品を買ってみたくなることもあるかもしれませんが、積立投資家にとっては、このような投資信託やETFは資産形成に適していないかもしれませんので、商品選びの際には慎重に検討いただくことをオススメいたします。

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