103歳 中野さんが漢検2級合格 「亡くなっていった戦友に報告を」元気の源

103歳で漢検2級に合格した中野さん=長与町吉無田郷

 長崎県西彼長与町吉無田郷の中野清香(きよか)さん(103)=は101歳から漢字検定の勉強を始め、昨年10月実施の同検定(日本漢字能力検定協会主催)で103歳にして2級に合格した。太平洋戦争で中国、ニューギニアを転戦し、終戦後、86歳まで現役で働いた経歴を持つ。そんな中野さんに、元気の源や日々の過ごし方について聞いた。19日は敬老の日-。
 1918(大正7)年9月、鹿児島県甑(こしき)島の大工の家系に生まれた。7人きょうだいの真ん中で、高等小学校卒業後、大工見習いとして働いた。20歳の時、徴兵で陸軍に入り、東部ニューギニア戦では飢餓や過酷な自然との闘いを強いられた。感染症や栄養失調で多くの戦友を失い、自身も赤痢で40日間生死をさまよった。「人間の尊厳が失われた壮絶な状況だった」
 復員後、大工や建設の仕事をしながら、57(昭和32)年、本県に移住。ちょうど建物が木造から鉄筋へと移り変わる時期で、「趣味どころではないほど忙しかった」とやりがいがあった日々を振り返る。県内の学校や住宅などさまざまな建造物に携わり、自ら立ち上げた工務店で86歳まで現役を貫いた。
 一線を退いた後は読書ざんまいの日々だ。本はジャンルを問わず、現在は中国歴史小説の「草原の風」(宮城谷昌光著)を上中下巻と熟読する。読書の合間に漢字パズルや数独を楽しみ、101歳の誕生日に家族から問題集をもらって漢字検定の勉強を始め、102歳で準2級、103歳で2級に合格。最年長記録を更新し、協会から特別賞が贈られた。
 「亡くなっていった戦友たちにいい報告がしたい」-。そんな気持ちが元気の源という。新型コロナウイルス禍以前は、戦友会での交流や東京・靖国神社への参拝、ニューギニアへの政府派遣の遺骨収集などに積極的に参加していた。手作りのアルバムには戦友や遺族らとの思い出の写真が並び、「宝物」と顔をほころばせる。
 昨年末から今年2月にかけ一時入院したが、今は自宅に戻り、趣味の読書やテレビの相撲観戦にいそしんでいる。取り組み結果は毎日、星取表に書き込むという熱心ぶりだ。
 今月28日で104歳を迎える。70歳で亡くなった妻ムツさんとの間に子どもが4人。孫は11人、ひ孫は17人となった。コロナ禍となり、以前のように戦争について語る機会が減ったことが気がかりで、「もっと若い人に戦争の悲惨さを知ってもらう機会がないか」と思案している。


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