支持率低下が止まらない岸田内閣|和田政宗 岸田内閣の支持率低下、何が原因となっているのか。メディアは、旧統一教会問題が足を引っ張っていると言うが、皆様から強く聞く声は、「岸田内閣は実績が見えない」「決断が遅い」というものである――。

毎日新聞では内閣支持率29%

岸田内閣の支持率低下が止まらない。急落となっており、危険水域に迫るという声が聞かれ始めた。皆様からのご意見は厳しいものばかりだ。

先週発表された時事通信の9月9~12日の調査で、内閣支持率が32.3%(前月比-12.0)、不支持率が40.0%(+11.5)となったのをはじめ、先週末の調査では、共同通信で内閣支持率が40.2%(-13.9)、不支持率が46.5%(+18.3)。日経で内閣支持率が43%(-14)、不支持率が49%(+14)となった。

いずれも岸田内閣発足以来最低となり、不支持が支持を逆転し、初めて上回った。なお、数字が低く出る毎日新聞では、内閣支持率は29%(-7)、不支持率は64%(+10)だった。

何が原因となっているのか。メディアは、旧統一教会問題が足を引っ張っていると言うが、皆様から強く聞く声は、「岸田内閣は実績が見えない」「決断が遅い」というものである。

これらの声は今年の参院選でも挙がっていたものであり、新型コロナ禍を克服するための大型経済対策の策定や、全国旅行支援の開始、出入国水際対策の本格緩和はいつになるのかという質問が多く、経済活動のフル化を国民は望んでいるのに「まだ決断しない」という失望である。

それがさらに、「岸田総理は国民の苦しさを分かっているのか?」という怒りにつながってきている。

旧統一教会問題、逃げずにしっかり説明を

そして、旧統一教会問題は、自民党から点検結果の発表があったが、「説明が不足している」「まだ隠しているのではないか」と疑問に思っている国民が多いことが世論調査の結果からもわかる。私はこのような疑問への対応として、次の例を参考にすべきであると思う。

それは、党による点検に対し「選挙支援の依頼、動員などの受け入れ」があったと答え発表した衆院議員(4回生)の対応であるが、逃げることなく記者会見を行い、記者からの質問にも丁寧に答え、「現在の教団は問題のない組織になったと考えていたが、認識が甘かった。今後はお付き合いをしない」と述べた。

その後、この議員に対する追及や追加の報道はない。このように過去に関係があったとしても、なぜ関係があったのかの事実をつぶさに明らかにし、今後どうするのかをしっかり説明することが国民の理解につながる。五月雨式に追及されれば問題が長引く可能性があり、正面から丁寧に説明を尽くすことが重要である。

来月からは臨時国会が始まる見込みである。旧統一教会問題についての質疑もあるであろうが、国民の大きな関心は、暮らしに直結する経済対策である。岸田総理は10月に大型経済対策を取りまとめることを表明し、補正予算について「対策の内容を踏まえ、しかるべき時期に検討していく」と述べた。

50兆円規模の補正予算を組むべき!

萩生田政調会長は先週、党の会合で、「補正予算は昨年を上回る30兆円超は必要」と述べた。私は50兆円規模の補正予算を組んで、新型コロナ禍の影響が続く経済のテコ入れをすべきだと思う。

現在、GDPギャップはマイナス17兆円と、供給に対し需要が不足している。財政出動を行い、需要を喚起することが重要となってくるが、現在、部品や資材が手に入りにくい産業分野で需要喚起を促しても即座に効果は発揮しにくく、効果が出る時期がずれる可能性がある。

もちろんこうした分野への対策も必要であるが、即座に効果が出るものとしては「全国旅行支援」であろう。これは、私が安倍内閣時に国土交通大臣政務官として立案と制度設計にあたった「GoToトラベル」を岸田内閣で改変したものだが、旅行支援は直接、即座に消費として使われるものであり、需要喚起策としての効果が高く、経済全体への波及効果も高い。

実際、「GoToトラベル」が実施されていた期間は、経済の先行きは明るいとの見通しから自動車販売が好調となり、令和2(2020)年の9月の自動車生産台数は、トヨタ、ホンダ、スズキ、スバルが9月として過去最高となり、トヨタは12月まで4か月連続で過去最高となった。

岸田内閣にとっても自民党にとっても正念場

このように「GoToトラベル」は、裾野が広く地域産業の核となっている観光関連産業で消費が行われることによる経済効果と、消費がさらなる消費を生んでいくことにより、日本経済全体に大きな効果をもたらした。

「GoToトラベル」の予算は合計2兆7千億円。旅行代金への50%補助なので、全国で使われる金額は皆様のお財布からの2兆7千億円も含め、5兆4千億円となる。日本の名目GDPは550兆円であるが、その約1%のあたる額が直接的に消費で使われることになり、民間のシンクタンクの試算ではGDPの押上げ効果は3%になるというものもあった。

途中で停止となってしまったので効果はフルに発揮されなかったが、「GoToトラベル」が動いている期間は、景気はV字回復するとの実感が全国各地であった。そして現在、「全国旅行支援」の開始に向けた準備が進められているが、予算は5600億円ほど。これは、「GoToトラベル」の例からすると3か月ほどで使い切ってしまう可能性がある。

その後の観光需要喚起策で使える予算はさらに2700億円あるが、効果を大いに出すためには、GoToトラベルの停止で国庫に返納した4600億円をもう一度旅行支援予算に組み入れるべきであるし、私は合計1兆円規模の予算を新たに獲得し、観光キャンペーンを打つべきであると思う。

国民の期待は、経済の回復とその後に向けた力強い大型経済対策である。これが国民が失望する内容となれば、支持率はさらに下がってしまう。国民の期待に応えられないのであれば、「交代すべき」という声が上がるのは常である。来年春には統一地方選挙を控える。

国民が経済の先行きについて明るいと感じられる大型の補正予算の策定が必須である。岸田内閣にとっても我が党にとっても正念場だ。

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和田政宗

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