鈴木聖美 with 鈴木雅之「夜明けのスターライト」男女ハモってデュエットを楽しもう!  デュエット曲王道のパート構成。ハモりをキメてこそ雰囲気が出る!

鈴木聖美・雅之姉弟のデュエットソング「夜明けのスターライト」

カラオケで男女のデュエット曲を歌おうとして、お互いが歌える曲を探すものの、結局は演歌や誰もが知る有名曲に落ち着いた―― という経験をされた方は多いのではないでしょうか。

しかし、昭和のデュエット曲の中には、さほど知られていないけど “実はすごい曲” がたくさんあります。さらに平成に入ると、コラボレーションが活発に行われるようになり、男女デュエットや男女コラボレーションの楽曲がたくさん生まれました。

そんな名曲たちを掘り起こすべく、邦楽の男女デュエット・コラボレーション楽曲を紹介するシリーズを、私のコラムテーマのひとつに据えていきたいと思います。今回は鈴木聖美「夜明けのスターライト」を取り上げます。

発売上は鈴木聖美の単独名義ですが、実際は弟の鈴木雅之とのデュエット曲であり、カラオケメーカーのDAMやJOYSOUNDでは “鈴木聖美 with 鈴木雅之” というアーティスト名で登録されています。

姉と弟が放つ “大人の夜” の雰囲気。だけど実際歌うのは難しい…

鈴木聖美・雅之の姉弟と言えば、誰もがすぐに「ロンリー・チャップリン」を思い浮かべることでしょう。1987年に発売されたこの曲は、平成の間もずっと、そして令和の今まで35年間、男女デュエットの大定番曲として歌い継がれています。鈴木聖美や鈴木雅之(シャネルズ、ラッツ&スター)の歌を普段は歌わない人でも「ロンリー・チャップリン」なら歌ったことがある、という方は多いと思います。

「ロンリー・チャップリン」については、筆者がコラム『鈴木聖美 with Rats & Star「ロンリー・チャップリン」が夜の街のカラオケを席巻するワケ』の中でパート割りの妙に関して考察したように、デュエット曲として素晴らしいのですが、カラオケ好きな方の中には "ハモリのパートが短い・少ない" と、やや物足りなさを感じる方もいらっしゃると思います。

デュエット曲王道のパート構成。ハモりをキメてこそ雰囲気が出る!

そんな方にお薦めなのが、鈴木姉弟のもう1つの名曲「夜明けのスターライト」です。この曲は「ロンリー・チャップリン」発売の翌年、1988年の5月に発売された鈴木聖美のアルバム『Cotton』に収録され、9月にはシングルカットされました。「ロンリー・チャップリン」はヒットしましたが「夜明けのスターライト」は当時、話題になった記憶が私にはありません。私はリアルタイムではこの曲を知らず、数年後に鈴木聖美のベストアルバムで知りました。

「夜明けのスターライト」は、デュエットの基本であるハモりがきっちり入っています。「ロンリー・チャップリン」と同じく、サビで初めてハモりが入りますが、サビの8小節のうちハモりが6小節続きます。サビのほとんどでハモれるという、男女デュエット曲としては王道のパート構成になっています。

「ロンリー・チャップリン」は、ハモらずにユニゾンで歌っても良い雰囲気を作れますが、「夜明けのスターライト」はハモりをキメてこそ雰囲気が出ます。ハモりのメロディーは一聴するとさほど難しくないと感じるかもしれませんが、下ハモ(=メインメロディーより低い音程でハモる)は意外と難しいので、男声パートは油断せずにきっちり音取りすることをお勧めします。

これぞ醍醐味! フェイクでハモったり、エコーを入れて掛け合う

そして「夜明けのスターライト」の特筆すべき点は、フェイクやエコーなどの遊びがちりばめられていることです。まずイントロでは、女声が Uh… Yeah… Oh Darlin' とフェイクを歌い、男声が Oh… Yeah… Baby と応じるという、大人の雰囲気で曲が始まります。

サビが終わり間奏に入ると、ほとんどフェイクで埋まっていて、しかもフェイクでハモる箇所があります。フェイクのハモりは、他の曲だと歌手の技量をアピールするような難しいハモりになることが多いのですが、「夜明けのスターライト」のそれは技巧的ではなく、それでいてキマるととてもカッコいいハモりになっています。

続く2番冒頭の歌詞は、

 女:哀しいことが  男:   ことが

 女:起きないように  男:    ように

…… であり、女声が歌うメロディーに男声がエコーを入れます。ここでは同じ歌詞で追いかけるという意味で “エコー” という言葉を使いましたが、エコーのメロディーはメインとは異なります。違うメロディーをフェイクっぽく入れるのが、これまたカッコいいのです。2番のAメロの繰り返しは、

 男:淋しくはないさ  女:    ないさ  男:生まれたままで  女:    ままで

…… のように、男女の役割が入れ替わります。この直後には、男声のメインメロディーに女声がハモる箇所もあります。フェイクでハモったり、エコーを入れて掛け合いをしたりするのは、デュエット曲の醍醐味ですよね。「夜明けのスターライト」ではその醍醐味を存分に味わうことができます。

「ロンリー・チャップリン」より多彩な演出がカッコいい “大人のデュエット”

ここまでカラオケで歌うことにフォーカスしてきましたが、歌を聴くという点に立ち返ると、「夜明けのスターライト」は鈴木聖美・雅之の真の実力が分かる1曲だと思います。

ハモりの分量やバリエーションに関して「ロンリー・チャップリン」に物足りなさを感じている方は、鈴木姉弟のムーディーかつカッコいいハーモニーが織り成す "大人のデュエット" を存分に堪能してください。

■ Song Data ■ 夜明けのスターライト / 鈴木聖美(with 鈴木雅之) ■ 作詞:岡田ふみ子 ■ 作曲:野田晴稔 ■ 編曲:伊藤銀次

男声ハモり分量:★★★ 男声ハモり多彩さ:★★ 女声ハモり分量:★ 女声ハモり多彩さ:★ 掛け合いや遊びの妙:★★★★ カラオケ難易度男声:★★★ カラオケ難易度女声:★★ カラオケ満足度:★★★★ ※評価値は5段階評価。あくまで筆者の個人的な見解です

カタリベ: 倉重誠

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