第7波はピークアウトを迎え、新規感染は少しずつ落ち着いてきています。こうした中、心配されているのが後遺症患者の増加です。数少ない専門外来がパンク状態になって、今後、診察を受けたくても受けられないという事態が懸念されています。
吉島病院 岸川 暢介 医師
「(症状に)けん怠感とあるが、どんな感じで生活している?」
コロナ後遺症患者Aさん(20代)
「手足が重くてだるいのと、歩けたり、手を動かせるけど、だんだんだるくなって重くなってきて、動かしづらいのが続いている」
広島市中区にある吉島病院のコロナ後遺症外来。去年、県内の民間病院で初めて設置されたコロナ後遺症の専門外来です。
この日、診察に訪れていたのは、7月上旬に新型コロナに感染したAさん。熱やのどの痛みなど症状は軽症だったといいます。ところが―。
コロナ後遺症患者Aさん
「足が、鉛が入ったみたいに重くて、歩くのも遅いし、階段上ったりするのもできないし、手もペンで字を書いたりするのもしんどかったり」
コロナの症状自体は軽かったにもかかわらず、その後、けん怠感などの後遺症に悩まされています。
コロナ後遺症患者Aさん
「働けないのが一番しんどくて、仕事に行けると思って行ったが、ちょっとの時間でしんどくなって早退するのを何回か繰り返していたので、相手にも迷惑かける。いつまでこの症状が続くのかというのは不安というか、しんどい」
Bさんもコロナの感染者数が広島で過去最多となった先月中旬に感染。その後、後遺症の症状に苦しんでいます。
吉島病院 岸川 暢介 医師
「呼吸が苦しいとか、夜寝られないという症状を訴えているが、ほかには?」
コロナ後遺症患者Bさん(40代)
「ちょっとしんどい、少し動くと。すごく日によって違う。半日ぐらい、家の掃除をしたり、前と同じことをして、とやると、もう次の日の朝がだいぶしんどいというか」
岸川医師によりますと、現在、吉島病院にかかっている後遺症患者の症状で一番多いのは、けん怠感…。ほかに、頭にもやがかかったようなブレインフォグや、不眠などが多いといいます。
吉島病院 岸川 暢介 医師
「デルタ株のときは、味覚障害・嗅覚障害を訴える人が多かったが、オミクロン株になってからは明らかに味覚障害・嗅覚障害を訴える人が減っている。その代わり目立つのが、けん怠感」
デルタ株に比べ症状は比較的軽いといわれるオミクロン株。しかし、後遺症のつらさは以前と変わりません。
Bさんも後遺症のため、この1か月間、仕事を休んでいるといいます。
コロナ後遺症患者Bさん
「日によって症状が違うので、きょうはできたのに次の日は全然できないとか、余計に理解しがたいのかなと思う。自営なので自分が早く戻らないと、という思いがあるが、何回か試したが、やはり1時間ぐらい働くとめまいがしてくる。無理してやって長引くよりは、当面、休んで、完全に治してからの方がいいのではないかということで、今は完全に妻に任せてやってもらっているような状態」
後遺症のつらい症状が長引いている人もいます。けん怠感や不眠などに悩まされているCさんもその1人です。
吉島病院 岸川 暢介 医師
「頭痛もあるみたいだが、どんな感じの痛み?」
コロナ後遺症患者Cさん(30代)
「急に頭を絞められる痛みから、急に人にたたかれている感じ」
5月にコロナに感染したCさんは、その後も後遺症が続くため、今月から吉島病院に通い始めました。
コロナ後遺症患者Cさん
「症状が軽かったので、そこまでひどくないだろうと思っていたが、かかってから4か月くらいになるが、今だにこんなにつらいというか、なかなか仕事にも出られない状態なので会社にも申し訳ない。なかなか状態が自分自身、見えていないので、これがいつ終わるのかという思い」
吉島病院の後遺症外来に通院している患者で長い人は1年以上になるといい、学校や仕事に行けず、悩んでいる人は少なくないといいます。
吉島病院 岸川 暢介 医師
「授業を休みたくない、単位を落としたくない。会社で休んで、これ以上、迷惑かけたくない。そういう悩みが一番多い。特に社会人だと、どうしても早く復帰できないのかというプレッシャーみたいなものを感じている人が本当に多いと感じる」
こうした中、今、心配されているのは…。
吉島病院 岸川 暢介 医師
「ちょうど第7波が少し終息がみえてきた。これぐらいのタイミングから第7波の後遺症の患者がこれから来院するという感じなので、むしろ心配しているのは、これから増えるのではないかと思って」
現在、吉島病院の後遺症外来で初めての患者が診察を受けられるまで、すでに1か月待ちという状態だといいます。
数少ない専門外来がパンク状態になって、今後、診察を受けたくても受けられないという事態が懸念されているのです。
東京・渋谷にあるヒラハタクリニック。平畑院長は地元の病院で診てもらえない患者にオンライン診療を行うなど、これまでに4600人の後遺症患者を診察しています。
ヒラハタクリニック 平畑 光一 院長
「きょうも午前3時半ぐらいまで、オンライン(診療)をやっていたが、それでも数十人断らないといけないような状況。後遺症をしっかり診るという医療機関が圧倒的に足りないと思う」
平畑院長は、海外の論文で感染者の1割が後遺症になると指摘されていることから、日本国内の後遺症患者は200万人に上ると推定。
専門外来だけではもはや診察は不可能で、後遺症外来や協力してくれる医師を増やす必要があると訴えています。
ヒラハタクリニック 平畑 光一 院長
「200万人もいるとなったらコロナ後遺症外来だけでは診れないので、おのおのの地域の診療所の先生方にご協力頂かなければ、とてもなりゆかないということになる。その上で、国の方で、どういう診断したらいい、どういう治療したらいいということを指針を出していかなければいけない。国が旗をしっかり振っていくということが必要になると思う」
― 日本を含め先進国は、オミクロン株は比較的症状が軽いということで、そろって経済優先に舵を切った訳ですが、アメリカでは400万人が後遺症で働けなくなっている可能性があるというデータもあるようです。
― 学校に行けない、働けないとなると、本人にとっても社会にとってもダメージが大きく、今まさに国が先頭に立って、後遺症治療に乗り出すべきタイミングだと思います。