石木ダム工事差し止め訴訟 住民 敗訴確定 最高裁、上告退ける

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、水没予定地の住民らが県と市に工事差し止めを求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(三浦守裁判長)は20日までに、住民側の上告を退ける決定をした。住み慣れた土地で暮らす「平穏生活権」が侵害されたとする住民側の請求を棄却した一、二審判決が確定した。
 決定は16日付。それによると、原判決に憲法解釈の誤りや手続き不備がある場合に上告できる民事訴訟法の規定に「該当しない」という判断で、裁判官全員が一致した。
 建設予定地では、県と市が土地収用法に基づき権利を取得。現在も事業に反対する13世帯が暮らしているが、付け替え道路や本体の工事が進んでいる。
 住民側は2017年3月に提訴。20年3月の一審長崎地裁佐世保支部判決は、住民の主張する平穏生活権を「抽象的で不明確」として訴えを退け、21年10月の控訴審もこれを支持。住民側は不服として同年11月に上告していた。
 原告の一人、岩本宏之さん(77)は「県の見方に立った判断」と冷静に受け止め、今後も抗議の座り込みを続ける考えを示した。これまで「係争中」を理由に佐世保の建設反対派市民団体との対話に応じていない県に対し、「会わない理由がなくなった」と指摘した。
 大石賢吾知事は報道陣の取材に応じ、「主張が認められた。佐世保市や川棚町と一体となって早期完成に向けて尽力したい」と述べた。その上で「これ(上告棄却)で何かが変わるわけではない。(住民との)話し合いを最優先に継続したい」として理解を得る努力を続けると強調した。
 朝長則男市長は「事業の必要性、緊急性は既に別途司法判断で確定している。工事続行についても認められたことにより、早期実現に向け環境が整ったものと思う」とコメントした。最高裁は20年10月、住民側が国に事業認定取り消しを求めた訴訟で、住民側の上告を退け、必要性を一定認めている。


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