那珂川で10、11月夜間の取水停止 仔アユ迷入8分の1に 霞ケ浦導水事業

魚類迷入防止対策の調査が行われた那珂川の取水口=8月下旬、水戸市渡里町

 茨城県の霞ケ浦と那珂川、利根川を地下トンネルで結び水を行き来させる霞ケ浦導水事業で、国土交通省霞ケ浦導水工事事務所は20日までに、水戸市渡里町の那珂川取水口から取水した際の魚類の迷入(吸い込み)量や防止対策の効果を調べた3年間の試験結果を公表した。那珂川でアユの仔(し)魚(幼魚)の降下と迷入は11月がピークとなることから、10月から2カ月間は夜間の取水を停止するなどし迷入を抑制することを決めた。漁業側は事業を引き続き注視していく考え。

 迷入試験は取水時の魚類迷入対策の効果検証のため、2019年7月~22年6月の3年間で実施した。取水口は全8門あるが、試験施設として整備した4門のうち2門を使用した。

 試験により、遊泳力のない仔アユは9月下旬から降下が始まり、11月にピークとなることが判明。取水口への迷入も11月上旬が最も多いことが分かった。

 結果を受け、同事務所は仔アユの年間総降下量の約9割を占める10月1日~11月30日、降下が活発になる夜間に取水を止める。調査期間中の仔アユの推定降下量約51億尾のうち取水口への迷入は6.9%だったが、2カ月間の取水停止により約8分の1の0.8%まで低減できると推定する。

 一方、遊泳能力がある稚アユや稚サケはスクリーンや除塵ネットを設置することで、取水口への迷入を防げると結論づけた。

 外部有識者でつくる検討委員会(委員長・西村仁嗣(にしむらひとし)筑波大名誉教授)は7月、対策案を承認。同事務所によると、関係漁協への説明会では特段の意見はなく、了承を得られたという。

 本県の那珂川流域4漁協で組織する県那珂川漁協連合会の薄井一郎(うすいいちろう)会長(79)は「2門での試験結果からは『影響が全くない』とはいえない。8門完成後の状況を見ていく」と話した。

 茨城県の那珂川第一漁協の小林益三(こばやしますぞう)組合長(84)も、完成後に影響を判断すべきだと指摘。調査期間中、同漁協のサケの漁獲量が8割強減少したため「影響は未知数」と受け止める。

 同事務所の担当者は「環境の変化があれば必要に応じて調査を行い、しっかりと状況を把握して事業を進める」としている。

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