【記者解説】沖縄防衛局、辺野古新基地の設計変更巡る国の裁決の有効性を前提 国と地方との対等性侵害の指摘も 不服審査請求

 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を進める沖縄防衛局によるサンゴ類特別採捕(移植)許可申請を巡り、県が不許可としたのを不服として沖縄防衛局が行政不服審査を請求したのは、軟弱地盤が広がる大浦湾で工事が継続できることを前提にしている。だが、軟弱地盤の問題を受けた設計変更の申請について、県は承認しておらず、工事を完遂できる見通しは立っていない。

 国は、県の設計変更不承認を取り消す裁決をし、それを基に承認するよう「是正の指示」をした経緯がある。防衛局が大浦湾のサンゴ移植を正当化するのも、裁決の有効性を前提にしている。行政による処分は、裁判所などに取り消されるまで効力を発揮するという「公定力」や裁決に拘束力があるという考え方が基にある。

 一方、琉球大の徳田博人教授(行政法)は、対等である県と国が裁判で争う場合、少なくとも判決が確定するまでは公定力や裁決の拘束力はなくなると指摘する。「どちらかの決定が有効という前提になれば、対等性が崩れ、地方自治が侵害される」と説明した。

 県は、根本的に裁決の効力を問う立場から新たに訴訟を提起する方針で、22日に県議会の承認を得る考えだ。県が国の主張に納得し、裁決の有効性が確定したとは言えない状況だ。そもそも裁決に至る過程も「身内」である政府機関同士で完結しており、手続きには疑義が残る。

 (明真南斗)

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