墓石を花や植物で…近年注目の「ガーデニング葬」 専用霊園設ける寺、変わる供養のスタイル

墓石の周囲を色とりどりの花が彩るガーデニング霊園=福井県鯖江市の法華寺
安楽寺のコンセプトゾーンの様子。緑を多く配置し自然に囲まれた雰囲気になっている=福井県あわら市の同寺

 海への散骨や樹木を植えた区画に遺骨を埋葬する樹木葬など、少子高齢化や家族の在り方の変化とともに多様な形の埋葬方法に関心が高まっている。中でも墓石を花や植物で彩る「ガーデニング葬」は華やかな見た目で近年注目を集め、福井県内でも専用の霊園を設けたり、受け入れに向け準備を進めたりしている寺がある。

◆永代供養墓に合祀

 福井県鯖江市の閑静な住宅街にある法華寺(同市水落町2丁目)は2021年秋、境内に16区画分のガーデニング霊園を設けた。墓石は縦40センチ、横30センチ、高さ20センチ以下と小ぶりで、その周囲を取り囲むように色とりどりの花が植栽されている。明るく華やかな雰囲気で、すでに5区画で納骨されている。

 同霊園では遺族に代わって寺が永代供養するというのも特徴。13年または33年の納骨期間満了後、遺骨は寺の永代供養墓に合祀する。「後継ぎや将来的な墓じまいの心配がないのがメリット」と上島日祐住職(73)。花の手入れや季節ごとの植え替えも寺が行う。遺族が掃除など管理する必要はないため、遠方に暮らしていても安心だ。

 ガーデニング霊園に父の遺骨を納めた同県越前市の男性(56)は、一時はほかの墓地を予約したが「墓を建立することで子どもたちの重しになるのでは」と考え直したという。男性は「常に花で囲まれ、父も喜んでいると思う」と話す。

 生前に本人が見学を申し込むケースも少なくない。抱く思いはさまざまで、上島住職は「子孫に無理をかけたくないという声や、友人同士で入りたいという女性グループもあった」と話す。同寺では従来の様式に固執せず、故人や遺族の気持ちに寄り添い相談に乗っている。

◆無理なく供養を

 年内の完成を目指し、受け入れ準備を進めているのが同県あわら市の安楽寺。北潟湖畔を見下ろせる小高い土地にガーデニング霊園の区画を整備中で、完成に先駆けて本堂の近くに「コンセプトゾーン」を設け見本を展示している。

 庭墓(niwa・bo)と銘打ち、新しい供養のスタイルを提案。イメージはイングリッシュガーデンで、ハツユキカズラやギボウシなどの植物を多く配置する。杉本成範住職(44)は「自然に囲まれた雰囲気にしたい」と話す。

 杉本住職は、2年前に住職に就任した当時からアイデアを温めていた。檀家が高齢化し管理が行き届かない墓も見受けられ、無理なく供養できる形を考えていた。法華寺と同様、契約期間後は総墓(永代供養墓)に移すという。ライフスタイルの変化に合わせ、家族の一員であるペットとの“同居”も受け入れる予定で、総墓への移行についての条件整備を進めている。

 安楽寺ではさらに、遺族に墓参りだけではない時間の過ごし方として、寺の宿坊利用や、スイーツ教室など多彩なイベントへの参加も提案する。杉本住職は「故人を偲びながら、ゆっくりと寺で過ごしてもらいたい」と話している。

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