アルファタウリF1コラム:アップデートの理解が深まり、パフォーマンス改善が見えた3連戦。角田は予選一発の安定感を発揮

 シーズン後半戦のスタートを飾る3連戦で、アルファタウリにはポジティブとネガティブの両面があった。

 ポジティブだったのは、マシンにポテンシャルがあったということだ。第14戦ベルギーではやや苦戦してピエール・ガスリーが予選12番手止まりだったものの、角田裕毅もフロアダメージ起因のターン13でのスナップがなければ同等のタイムが出せていたはずだ。そして2台ともにピットレーンスタートとなったもののガスリーが入賞を果たす速さを見せた。第15戦オランダ、第16戦イタリアでもQ3に進出し、シーズン前半戦に停滞していたピュアパフォーマンスを改善できたのは大きかった。

 これは第12戦フランスで投入したアップグレードをきちんと使いこなし、マシンのポテンシャルを最大限に引き出せるようになったことが大きい。新型フロアとサイドポッドに合わせてリヤサスペンションのフェアリングを改良し、リヤエンドの気流を最適化。マシンバランスのピーキーさや原因不明のグリップ不足に苦しむことが少なくなり、ドライバーが自信を持って攻めることのできるマシンに仕上げられるようになってきた。それが予選でのポジションアップに繋がってきたのだ。

 第13戦ハンガリー決勝でガスリーのセッティングを大きく変更し、2台で比較データを収集した。それによってアップデートパッケージに対する理解が深まり、さらなるマシン改良とセットアップの勘所がしっかりと掴めたのが大きかった。

「ハンガリーで2台で大きくセットアップを分けて走ったことでそこから発見した部分があったので、理解は進んできています。僕ら自身としてはアップデートパッケージに適応できたかなというところなんですけど、他のチームがアップデートを入れて来ているので外から見たときにその効果がリザルトとして見えにくいというのがあります。でもQ3を狙えるパフォーマンスがあるレースは、結構あると思います。スパもそうでしたし、ハンガリーも結構それに近いパフォーマンスがあったと思います」(角田裕毅)

2022年F1第14戦ベルギーGP 角田裕毅(アルファタウリ)

 もうひとつ見えてきたのが、高速コーナーが苦手、低速コーナーが得意という単純な話ではなく、ローダウンフォースパッケージでは競争力があるが、ハイダウンフォースパッケージでは苦戦を強いられるという傾向だ。

「今の自分達に足りない部分というのが徐々に見えてきて、どういうサーキットが合っていてどういうサーキットが合っていないのかは分かってきました。個別のコーナーがどうというよりも、ダウンフォースを必要とするサーキットの方がより厳しくなる傾向があるかなと感じています。でもそこまで多くダウンフォースを必要としないサーキットではそれほど苦戦することは少ないかなという印象です。そのいい例がスパ・フランコルシャンとアゼルバイジャンで、そういうサーキットではダウンフォースレベル自体がかなり低い状態で走るなかでもハンガリーのようにそんなに苦しんでいないので、そういうところが自分達のマシンとしては合っているかなと思います」

 ガスリーが入賞を果たしたことからも分かるように、実際ベルギーとイタリアではQ3に進出し入賞するポテンシャルがあったことは確かだ。

2022年F1第16戦イタリアGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ)

 その一方で、レースではこの3戦で6ポイントしか獲得できておらず、実力が結果に結びつけられていない。ランキング4位のアルピーヌは26ポイント、5位のマクラーレンは12ポイントを獲得している。ランキング6位以下のチームで言えば最多のポイントを稼いでいるが、マシンの実力からすれば現在のアルファタウリがランキング8位に沈んでいることの方が問題だと言える。

 ベルギーでは角田のマシンにピットストップミスが起きて入賞のチャンスを逃し、オランダではデフトラブル。イタリアでは戒告5回による10グリッド降格ペナルティを受けてパワーユニット投入を行い最後尾スタートとなったため入賞できなかったが、もしペナルティがなければ、予選でガスリーよりも優勢だった角田も入賞圏を走ることができていたはずだ。

 マシンのポテンシャルを引き出せるようになり予選パフォーマンスが向上してきたものの、決勝のレース運営はまだまだ凡ミスが多く、速さを結果に結びつけられていない。それが第6戦スペインから一度も入賞がないという角田の苦境に直結してしまっている。

 それでも、チームとしてはようやく第8戦アゼルバイジャンGP以来となるポイント獲得がベルギーで果たせたのは大きかった。フランスで投入したアップデートとその後のセットアップ熟成が間違っていなかったことを証明するものであり、つまりは今後のさらなるアップデートや来季に向けた開発が正しいという証でもある。

 そして角田自身も本来のリズムが徐々に取り戻せつつあると感じている。

 予選一発のパフォーマンスに関しては僚友ガスリーと同等かそれ以上の走りが安定して発揮できるようになってきている。レースペースが目下の課題で、こちらがさらに改善できれば速さが結果に結びつかないという現状も大きく変えていけそうだ。

「一度ポイントが獲れれば元のリズムに戻っていい波に乗れると思うんですけど、一発の速さは段々いい波に乗れてきているので、それを崩さず同時にロングランの改善に集中していきたいなと思っています」

 ガスリーの地元フランスGPで大型アップデートを投入し、チームの地元イタリアGPを終え、次はいよいよ角田とホンダの地元である日本GP。日本のファンが何を待ち望んでいるのか、それはもちろんアルファタウリも熟知している。だからこそ鈴鹿へ向けて全力でプッシュしているところだ。

2022年F1第16戦イタリアGP ピエール・ガスリーと角田裕毅(アルファタウリ)

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