<レスリング>【2022年世界選手権・特集】13個のメダルに、「素晴らしいことを選手がやってくれ、うれしく思います」…赤石光生・強化本部長

 

 【ベオグラード(セルビア)】男女3スタイルを通じて7階級で優勝、13個のメダルを取った2022年世界選手権。「女子の5階級制覇」は16年ぶり、「全階級メダル獲得」は14年ぶり、「男子フリースタイルの2階級制覇」は43年ぶり、「国別対抗得点の3強入り」は55年ぶりと、記録づくめの大会となった。赤石光生・強化本部長は「素晴らしいことをやってくれ、うれしく思います」と、選手の奮戦をねぎらった。

選手の奮戦をねぎらった赤石光生・強化本部長=撮影・保高幸子

 男子グレコローマンは銅メダル2個。金メダルを目指していた選手にとっては物足らない結果だが、来年に向けて課題が見えた。同本部長は、グラウンド攻防を課題に挙げる。試合の70、80パーセントは、グランドでの展開。「持ち上げないでポイントを取っているのは、文田健一郎選手くらいですね」と話し、U20・17世代も含め、グラウンドの強化に力を入れていきたいという。11月に味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で、シニア・U20・U17の代表選手を集めた合宿を予定している。

 女子に関しては、「メダルを獲得するという意気込みがすごい」と評した。世界選手権で勝っても、国内では拮抗している階級も多く、「ここで負けてはいられない」との気持ちを強く感じた様子。これが日本の強みと指摘し、「世界一の選手が数多くいる国ならではですね」と話した。

12月の全日本選手権は壮絶な闘いを予想

 オリンピック階級で学生選手が勝ったこと(57kg級=櫻井つぐみ、62kg級=尾﨑野乃香)について、「こんなにも早く成長するんだな、と思います。東京オリンピックの代表選手が追われる立場になって、追い越されてしまうかも、という勢いです。12月の天皇杯(全日本選手権)、来年の明治杯(全日本選抜選手権)はどうなってしまうのかな、と思います」と、さらなる壮絶な闘いを予想した。

アジア選手権優勝で、同室だった2人が金メダルを獲得!=撮影・保高幸子

 外国のレベルアップの前に「今後は厳しいだろう」と言われた重量級でもメダルを手にし、「明るい兆しが出てきました」と振り返った。

 男子フリースタイルの「金2個は43年ぶり」を聞かされると、「そんなに(期間が)あったんですか。勝つのは難しいんですね…」と感慨深そう。「選手と小幡邦彦ヘッドコーチ(山梨学院大教)を筆頭としたコーチ陣の努力のおかげです」と評しつつ、全体を通じて「タックルに入ってからの処理に課題がある」と言う。ただ、樋口黎の入ってからの処理は「すばらしい」と評した。

 今回優勝したのは、2階級とも非オリンピック階級。来年はオリンピック階級での好成績、オリンピック出場枠獲得が大きな目標となるので、復帰が予想される乙黒拓斗(65kg級)を含め、オリンピックへ向けての強化をしっかりと見直したいと言う。

裏で支えている人の努力にこたえる結果を出したい

3スタイルで745選手が出場した2022年世界選手権。オリンピック予選となる来年は、どんな激戦が展開されるか

 男子グレコローマンでは、「相手が体にオイルを塗っている」とアピールした場面があった。これについては、「普通にあるんですよ。トルコとかの国の人って、ふだんからオイルマッサージをよくやる。拭いて試合に出てきても、汗をかいたらオイルが浮くんです」と話し、必ずしも意図的ではないと解釈している。

 自身の選手時代にも経験があるそうで、「ふだんのオイルマッサージを禁止するのは不可能。(オイルを)アピールしても、何も変わらない。それも頭に入れて闘わなきゃいけない」ときっぱり。

 最後に、JSC委託事業で帯同したコンディション、トレーニング、栄養、映像解析など、表に出ない部分で勝つために尽力してくれた人たちに感謝の言葉を話し、「そうした方々の努力にこたえるだけの結果を出したいと思います」と締めくくった。

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