<社説>韓国与党大敗 日韓雪解け後退させるな

 国交正常化50周年を契機に、雪解けに向かった日韓関係の先行きが見通せなくなってきた。

 13日にあった韓国総選挙で保守与党セヌリ党が大敗した。選挙前の146議席から122議席に後退、革新系最大野党「共に民主党」が123議席と21議席伸ばした。

 セヌリ党は離党して当選した無所属議員の復党を認め、第1党の座を取り戻す算段だが、定数300の過半数に及ばないのは確実だ。朴槿恵政権は厳しい政権運営を迫られる。

 日本にとっても「従軍慰安婦」問題解決への合意や北朝鮮核実験・ミサイル発射への対応など、協調が進んでいただけに隣国の政治環境の変化は影響が大きい。雪解けの兆しが見えた日韓関係を後退させてはならない。

 韓国与党の大敗は、李泳采・恵泉女学園大准教授の分析によると、朴政権3年間の審判として、経済悪化や失業の深刻化に有権者が不満を示したのが要因とされる。親朴派と反朴派に分裂した与党の状況など、既成政党への不信が強まったことも影響したという。

 新党「国民の党」が議席を伸ばし、第三極をつくって伝統的な二大政党制からの政界再編を国民が望んだことの表れともいう。

 懸念されるのは躍進した民主党の文在寅・前代表が「慰安婦問題」に関する「日韓合意は無効、再交渉すべきだ」と主張していたことだ。民主党は合意履行で鍵となる日本大使館前に設置された元「慰安婦」を象徴する少女像撤去に関しては「国民の抵抗を押し切って撤去するのは難しい」との立場を示している。

 韓国では外交や安全保障分野は大統領の権限とされ、総選挙でも「慰安婦問題」は明確な争点とならなかった。しかし国会で勢力を伸ばした民主党が、外交や安全保障面でも発言力を増すだろう。

 日韓と米国は北朝鮮の核・弾道ミサイル開発阻止に対しても協力強化で一致している。朴政権は経済制裁強化など対北朝鮮で「北風政策」を実施してきた。かつての「太陽政策」は巨額の支援が独裁政権の延命化、現在の核開発につながったとの評価もある。東アジアの安全保障上も時計を戻してはならない。

 一時、歴史認識や領土で対立した日韓も「未来志向」を掲げて前進している。この状況を後退させないよう日本側も継続的に対話する努力を惜しんではならない。

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