2023年度入試 早稲田大、上智大の新方式、最新の予想難易度が判明

学習指導要領改訂に伴う2025年度入試科目の各大学の公表に注目が集まっていますが、現在の高校3年生が受験する2023年度入試が本格的に始まる時期となりました。2023年度入試では首都圏の有力私立大学で新しい入試方式が導入されるなどの動きが見られます。とりわけ、早稲田大、上智大一般選抜の新方式と中央大法学部の都心移転は他大学にも影響を与えそうです。最新の予想入試難易度をもとにこれらの動向について見ていきます。

首都圏の有力私立大学で目立つ新しい入試方式

2023年度入試は、早稲田大、上智大、青山学院大の新しい入試方式の導入、中央大法学部の都心移転、立教大、東洋大の新学部設置、東京理科大の学部学科再編など、首都圏で志願者数が多い有力な私立大学で新しい動きが見られます。志願者数が多い大学は、他大学の志願者動向に対する影響力も大きいため、その大学を志望していない受験生も間接的に影響を受けます。これらの中でも注目されるのは、早稲田大学教育学部の新方式と上智大学の全学部(国際教養学部を除く)が新たに実施する大学入学共通テスト利用方式3教科型です。

早稲田大学教育学部は、従来の文科系A方式、理科系B方式に加えて、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)と各学科・専修ごとの個別試験を組み合わせたC方式、D方式を新たに実施します。文科系A方式は英・国・地歴の文系3教科型、理科系B方式は英・数・理の理系3教科型ですが、C方式は共通テスト5教科7科目(配点90点)と各学科・専修が出題する個別試験(配点150点)で行われます。個別試験は、英語、国語、数学などの教科試験を課す学科・専修と総合問題を課す学科などそれぞれ内容と試験時間が異なります。

早稲田大はすでにサンプル問題をホームページ上で公開するなど、受験生フレンドリーな対応をしていますので、気になる受験生は必ず見ておくことをお勧めします。D方式は理学科生物学専修のみが実施する方式で、共通テスト3教科5科目(理科2科目)と個別試験で行われます。配点はC方式と同じ90点+150点です。

河合塾の大学入試情報サイトKei-netでは、最新の予想入試難易ランクが公表されています(9月12日付)。C方式、D方式の予想入試難易度は共通テストのボーダーライン得点率が各学科・専修で異なるものの、概ね80%前後と高く、現段階で最も高い予想ボーダーラインは、教育学科教育学専修の85%となっています。共通テストは配点が個別試験よりも低いのですが、C方式は、志願者が募集人員の約8.0倍に達した場合は、共通テストの成績で第一段階選抜を行うとしていますので、予想ボーダーラインは高めに出ます。

両方式とも出願締め切りが1月20日(金)のため、共通テスト自己採点集計後の予想ボーダーラインを見てからでも出願が間に合います。なお、個別試験の予想難易度ですが、総合問題となる教育学科、社会科、複合文化学科は示されていませんが、その他の学科・専修は偏差値60.0~62.5と予想されています。なお、予想入試難易度は今後の志望動向(難化、易化予想等)によって更新されていきますので、定期的にチェックしておくと良いでしょう。

入試難易予想ランキング表:

https://www.keinet.ne.jp/university/ranking/

上智大、共通テスト3教科型の予想ボーダー得点率は高い

上智大学は共通テスト利用方式で、従来の4教科型に加えて新たに3教科型を導入します。神学部、総合人間科学部心理学科と看護学科は面接が課されますが、その他の学部は共通テストの得点のみで合否判定されます。上智大学で3教科型なお且つ個別試験無しでは、誰がどう考えても予想ボーダー得点率は高くなります。各学科の予想ボーダー得点率は、ほとんどが得点率80%以上となっており、文学部英文学科、外国語学部英語学科、法学部法律学科は90%という高い予想ラインとなっています。募集人員は各学科2~3名と少なく、経済学部経営学科の5名が最多です。

もちろん、実際の合格者数は募集人員よりも多くなりますが、出願締め切り日が1月12日(木)と共通テストの実施前となっていることから、出願者数は従来の4教科型よりも増え、実質倍率は学科によっては数十倍となることもあり得ます。

上記のように共通テスト3教科型の出願者数は従来の4教科型をはるかに上回ることが考えられます。そのため、考え方によっては4教科型を狙うことの方が理に適っているとも言えます。予想ボーダー得点率も当然ながら4教科型の方が3教科よりも低くなっています。4教科型は文系生の場合、数学ⅠAを受験しなくてはいけませんが、英語・国語の配点200点に対して、数学ⅠAは100点です。理系生の場合は国語(現・古・漢)の受験が必要ですが他の教科科目の配点が100点なのに対して、理工学部の国語の配点は50点です。仮にこれらの科目が苦手科目の場合でも配点が低いため、受験することを厭わなければ4教科型を勧める受験業界関係者は多いでしょう。

現在、公表されている予想ボーダー得点率は4教科型もそれなりに高いのですが、実際にはもっと下がると考えられます。3教科型新規導入に伴って、4教科型の募集人員を減らしている学科が多いため、予想の段階では高めに設定せざるを得ないというところがあるからです。

上智大の共通テスト利用方式の合格者数が増えると他大学に影響する

また、3教科型の合格者数がどれぐらいの人数規模で発表されるかも注目のポイントです。上智大学のホームページを見ると、3教科型と4教科型は併願が可能となっています。恐らく4教科型と3教科型は出願者の一部が重複するため、合格者も一部が重複する事になります。合否判定の際には大学側もそのことは分かります。

そこで、重複していても構わず4教科型、3教科型それぞれ個別の方式として考えて合格者を発表するか、両方式で合格している受験生をカウントして、その分、入学手続き率が経験的に分かっている4教科型で多めに合格者数を発表するのかなどによって、実際のボーダー得点率は変わります。

ただ、いずれにしても新方式の分だけ合格者数は昨年よりも増えます。そのことが、他大学、さらに言えばMARCHの各大学に影響して、MARCH各大学の共通テスト利用方式の入学手続き率は下がることが予想されます。各大学がそれを見越して従来よりも多めの合格者数を発表するかどうかですが、合格者数の増減はボーダーライン得点率のアップダウンに直接影響しますので気になるところです。受験生にとっては合格者数が多くなることは大歓迎ですが、大学にとっては必ずしもそうではありません。両者にとって程よいバランスというのが実は難しいのです。

中央大学法学部の都心移転の影響は意外に小さい?

都心(文京区茗荷谷)への移転公表後、注目されてきた中央大学法学部ですが、いよいよ2023年4月より、1年生から4年生までが都心のキャンパスで学ぶことになります。大学のホームページでは「2023年度以降入学生は1~4年次茗荷谷キャンパスで学びます。2022年度入学生は1年次のみ多摩キャンパス、2~4年次は茗荷谷キャンパスで学びます」とありますので、現在の大学1~3年生も4月から学部生全員が新キャンパスに移ります。

首都圏の地理をご存知の方には、釈迦に説法ですが、茗荷谷は山手線の内側の超都心で、中央大学多摩キャンパスからは電車等で約1時間半の距離です。移転によって首都圏各地からの通学利便性が上がり、特に千葉県からはこれまでと比較して格段に通学しやすくなります。そのため、志願者数はかなり増えると予想されますが、併願者の多い他大学への影響などは意外に小さいかも知れません。

中央大学法学部は、多摩キャンパスにあっても受験生からの人気は底堅く、早慶上智クラスを除けば、中央大学法学部を入学先として選ぶ受験生が圧倒的多数です。そのため、都心移転による効果はあるものの、受験動向の側面から見ると併願大に対しては、あまり大きな影響は無いものと考えられます。

現在でもすでにかなりの難関大学ですので、今以上に難化することは現段階では考えられず、前述の予想難易度も昨年と同等と予想されています。また、併願大との関係でも都心移転前からずっと優位です。ただし、中央大学法学部が志願者数増加に伴い、合格者数も増やすとなると話は別です。併願大の入学手続き率に大きく影響します。

2021年度入試は、高大接続改革初年度に加えてコロナ禍での入試でした。2022年度もコロナ禍2年目の入試で受験生や大学関係者は苦労しましたが、2023年度入試も無風とはいかないようです。受験生も大学も当事者は大変ですがこれらの有力私大の新しい動きは注目ポイントです。

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