ニジマスもびっくり!“富士山の恵み”で電気を作る 創業111年の発電所もまだまだ現役【1.5℃の約束】

CO2削減の切り札として導入が進む再生可能エネルギーの中で、水の力を利用した発電方法が、注目されています。この「小水力発電」で、国内一の実績を誇るまちが県内にありました。

静岡県富士宮市にある水力発電所です。水力発電といえば、大きな川やダムが思い浮かびますが、周りには見当たりません。

<東京発電 三島事業所 根本雅章所長>

「水を流す管があったが、その中に流れている水が発電所の中に入り、これがメインバルブ(主弁)と呼ばれるものだが、これを通過して、こちらの水車に流れ込む。このカタツムリの殻のような形をしているところを流れてタービンが回っている。そこの中に流れ込んで回転力を発生させている機械です」

発電の設備はシンプル。これで年間で一般家庭およそ1600世帯分に相当する電力を生み出します。小さな川や用水路を生かした発電量が1000キロワット以下の規模の発電は「小水力発電」と呼ばれ、近年、注目を集めています。

<東京発電 三島事業所 根本雅章所長>

「この発電所自体は、明治44年、1911年に運転を始めた発電所で、今年でちょうど111年になる」

古くから水力の利用が進められてきた背景には、富士宮ならではの地形的な特徴がありました。

<東京発電 三島事業所 根本雅章所長>

「水力発電には豊富な水と自然の高低差が必要だが、このエリア一体が、水力発電に適した地帯」

まち自慢のふつふつと湧き出す水に富士山に抱かれた地形。「小水力発電」をするには、もってこいの場所でした。現在、富士宮市内には全部で18の小水力発電所があり、その数、発電量ともに日本一です。

<富士宮市 環境エネルギー室 遠藤伸昭室長>

「日本一の小水力発電のまちとしても掲げている。持続可能な脱炭素に向けての1つの取り組みとして、小水力事業を推進するに当たっては、事業者に対しての支援に取り組んでいきたい」

富士宮市内では、ここ数年で稼働し始めた発電所もあります。そのうちの1つが白糸ノ滝の近くにあります。

<天野大輔記者>

「澄んだ水の中を養殖中のニジマスが泳いでいるんですが、池につながる水路にあるこちら、なんと小水力発電の設備なんです」

この養鱒場では2年ほど前に設備を設け、発電を始めました。

<白糸滝養魚場 秋山徳浩代表>

「ニジマスの養殖だけで食べていくのが厳しい時代があり、何とかしなければならないという時に、小水力発電に興味はあるかと声をかけてもらい、思い切って導入してみようかとなった」

水のまち、富士宮で進む小水力発電。発電量はわずかかもしれませんが、身近な再生可能エネルギーとして、今後もますます広がりを見せそうです。

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