“再エネの島” 「五島版RE100」開始1年 認知度途上、アピール強化へ

五島版RE100のロゴを示す心誠の佐野社長=五島市福江町

 長崎県五島市内外で独自の認定を受けた企業・団体が、事業活動で使う電気の全てを地場産の再生可能エネルギーで調達し、二酸化炭素(CO2)排出量ゼロにする「五島版RE100」が昨年9月に始まり、1年がたった。初年度の16企業・団体は着実にCO2排出を削減し、本年度は新たな事業者も加わる予定。一方、顧客や市民への認知度は途上で、主体の福江商工会議所などはPRに力を入れる。
 RE100はRenewable Energy(再生可能エネルギー)100%の略称で、世界的著名企業による国際ネットワーク。国内では企業や自治体が独自に取り組んでいるが、商議所主体は全国でも珍しい枠組み。脱炭素化に加え、環境に優しい商品・サービスに付加価値を高める狙いがある。

■意識の変化

 参加している市内企業の一つ、いけす割烹(かっぽう)心誠。地球温暖化が取り扱う魚介類の仕入れに影響を及ぼしており、佐野誠社長は「五島の宝である水産資源が失われている」と危機感を募らせる。人気メニューの「ウニ釜飯」は数年前に提供を中止した。
 五島版を開始した2021年度は、電気使用によるCO2排出量を20年度比13.6トン削減。佐野社長は「小さいかもしれないが人間の力で環境を良くしていかないと」と語る。
 かまぼこの製造販売業しまおうは、商談で五島産の再エネ使用をうたった自社の商品パンフレットを使う。「関東や関西では関心を寄せる量販店や商社もある。取引の後押しになる」と分析。有川新石材は、事業所内のほぼ全ての照明を省電力のLEDに交換するなど、意識の変化にもつながった。

■参加さらに

 参加事業者は新電力会社「五島市民電力」から供給を受け、5年以内に再エネ100%、CO2排出量ゼロにする。商議所内に設置された認定委員会に実施状況を毎年報告。21年度は、事業所を増やした2業者を除く14企業・団体が20年度比で計265.4トンのCO2を削減した。
 本年度はさらに11企業・団体が参加を予定。8月に総合商社双日が開業した高級ホテル「五島リトリートray(レイ)」もその一つ。同ホテルは「再エネの島という五島ブランドに沿って運営していきたい」と説明する。

■拡大目指す

 取り組みが進む一方、参加業者から「顧客や事業者あるいは市民にほとんど知られていない」と認知度不足を口にする。商議所の清瀧誠司会頭も「アピールが不足していた」と認める。今後、ウェブサイトでの取り組み紹介やロゴの活用、パンフレットの作成などを検討する。
 今後50社程度までの拡大を目指し、勉強会を開く予定。市民への浸透も模索する。国内外では、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた動きが加速。清瀧会頭は「世界的に異常気象が進む中、脱炭素化への取り組みは不可欠。RE100の意義を丁寧に説明していきたい」と強調する。

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