究極のカタログシリーズ『ジャズ百貨店』 名盤BEST 20 第7回:ビル・エヴァンス&ジム・ホール『アンダーカレント』

2016年の発売スタート以来、シリーズ累計出荷が75万枚を超えるユニバーサル・ジャズの定番シリーズ「ジャズ百貨店」。10月・11月に新たなラインナップ100タイトルが登場するのに先駆けて、これまでに発売された全510タイトルの中から“いま”最も売れている20枚をピックアップし、個性豊かな執筆陣が紹介します。

ビル・エヴァンスが『ワルツ・フォー・デビイ』等が含まれる「リヴァーサイド四部作」を演奏/リリースしたのが1959〜61年、本作『アンダーカレント』はその1年後、1962年の作品だ。「スタンダード・ナンバーの新たな解釈、そして主旋律/伴奏の構造を超えた独創的なインタープレイによってピアノ・トリオの新しい方向性を示した」とも言われる、四部作の印象派のような、現在だとアンビエントとも共振するような世界観に比べると、本作は非常に「ジャズ」的だ。ビル・エヴァンスもジム・ホールも革新性というよりは、ピアノとギターのデュオでいかに演奏するかに重きを置いているのではないか。だが、それは決してネガティヴなことではない。稀代のプレイヤー二人が真正面から演奏するジャズは、むしろそのフォーマットの奥深さ、インタープレイの醍醐味を十二分に感じさせてくれる。

<YouTube:I Hear A Rhapsody

単体での演奏も多いピアノだが、本作ではいわゆるピアノ・ソロにギターが加わったというより、ベースやドラムがいるトリオやカルテットの世界観をデュオで表現することを狙っているように思う。二人の息のあった演奏から生み出される、ベースやドラムの不在を感じさせないリズムの心地良さは圧巻だ。その上で、デュオの人数の少なさをより強調したような演奏をしているのが面白い。

お互いの音を察することで実現した、相手の音無しでは成立し得ない洗練されたミニマルな音数の凄さはもちろんだが、個人的には、時には音色やプレイをむしろ積極的に重ねに行くことで、デュオのままソロ演奏のような空間を作る瞬間に驚かされた。相手と役割を分担するだけでなく、絶妙な重なりすらも楽しみ活かす演奏は、デュオだからこその間の使い方、インタープレイの面白みが最も出ている場面の一つではないか。独自の世界観を持つ両者によるジャズだからこそ、現在聴いてもまったく色褪せることのない、インタープレイの極地を見せるような名作になったのだろう。

文:高橋アフィ(TAMTAM)
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【リリース情報】

ビル・エヴァンス&ジム・ホール『アンダーカレント』
UCCO-5759
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