新型『トヨタ・カローラGRS TCR』がデビュー2戦目でポール・トゥ・ウイン/TCRサウスアメリカ第7戦

 創設2年目のシーズンで数多くの話題を振り撒く南半球のTCRリージョン選手権、TCRサウスアメリカ・シリーズの第7戦が、9月17~18日の週末にアルゼンチン・ブエノスアイレスで開催され、前戦で世界デビューを果たした新型『トヨタ・カローラGRS TCR』が早くもポール・トゥ・ウインでの初優勝を達成。この“南米発”の新型TCRマシン開発を託された18歳のホルヘ・バリオが、2戦目にして歴史を作ることとなった。

 8月末に同国が誇る最新トラック、テルマス・デ・リオ・オンドで開催された1時間耐久戦にて、初の実戦投入となった『トヨタ・カローラGRS TCR』は、国際ゲストを招いてのセミ耐久フォーマットに対し、SCBストックカー・ブラジル“プロ・シリーズ”でトヨタ陣営に所属するチアゴ・カミーロと、地元の人気ツーリングカー選手権スーパーTC2000(STC2000)で、こちらもトヨタの新鋭として活躍を演じるバリオのペアを起用した。

 このレースウイークを通じて“TOYOTA GAZOO Racingラテン・アメリカ”として戦ったカローラは、予選からふたりのベスト合算でいきなりの3列目、6番手グリッドを獲得する。決勝ではカミーロがドライブ中の10周目にサスペンショントラブルに見舞われたものの、チームはすぐさま修復作業を完遂。25周目にはバリオがステアリングを引き継ぎ、ロングランでのデータ収集に励むなど、一定の競争力を発揮することが確認できた。

 そのデビュー戦を終えたカローラは、首都近郊に位置するアウトドローモ・オスカー・ガルベスで争われた第7戦にも姿を現すと、タイミングシステムの問題により25分遅れて開始された予選セッションでその潜在能力を発揮する。

 Q1序盤はバリオと同じく今季のSTC2000で大活躍を演じる17歳、イグナシオ・モンテネグロ(アウディRS3 LMS)のコースオフでいきなりの赤旗中断になると、残り14分に短縮された勝負で今度はアルセウ・フェルドマン(W2プロGP/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が燃料ポンプの問題でコース上にストップし、2度目のレッドフラッグとなる。

 再開後にファン-アンヘル・ロッソ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)の暫定トップタイムに挑んだバリオのカローラは、残り4分のところで2番手タイムを記録し、こちらもSTC2000経験者のホセ-マニュエル・サパーグ(PMOモータースポーツ/リンク&コー03 TCR)や、引き続きゲストドライバーに招かれたWTCR世界ツーリングカー・カップのレギュラー、サンティアゴ・ウルティア(PMOモータースポーツ/リンク&コー03 TCR)らを抑え、悠々のQ2進出を果たした。

この“南米発”の新型TCRマシン開発を託された18歳のホルヘ・バリオが、2戦目にして歴史を作ることに
ロッソのシビックは0.134秒、ウルティアのリンク&コーは0.648秒差で届かず。バリオのカローラがデビュー2戦目でのポールポジションを獲得した
日曜現地午前9時30分にスタートしたレース1は、ロッソのホンダ・シビック、ウルティアのリンク&コーを従えたポールシッターが順当にホールショットを決める

■トヨタ・カローラGRS TCRがライト・トゥ・フラッグ。週末には2023年カレンダーも発表

 そのQ2はセッション開始から全12台がトラックインし、ウルティアがウォームアップでわずかにワイドになる状況から始まると、バリオは最初の周回でファステストラップを記録し、ロッソやウルティアに対しコンマ5秒のマージンを築く。

 ポールポジション争いはそのロッソとウルティアがセクター最速のパープルを計時して追い縋ったものの、ロッソのシビックは0.134秒、ウルティアのリンク&コーは0.648秒差で届かず。バリオのカローラがデビュー2戦目でのポールポジションを獲得した。

「トヨタ・アルゼンティーナのサポートに心から感謝している。1周目は素晴らしかったけど、2周目には小さな問題があった。明日までに修正するつもりだけど、満足しているし、自信を持っているよ」と、事前テストからホセ-マリア・ロペスやマティアス・ロッシらとともにテストを担当してきたバリオ。

 日曜現地午前9時30分にスタートしたレース1は、ロッソのホンダ・シビック、ウルティアのリンク&コーを従えたポールシッターが順当にホールショットを決めると、トップ3の背後ではモンテネグロのアウディとラファエル・レイス(W2プロGP/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が接触上等のバトルを繰り広げ、上位勢が逃げを打つ体制をサポートする展開となる。

 この結果、17周を走破したバリオの『トヨタ・カローラGRS TCR』は、2位ロッソに2.997秒、3位ウルティアに約20秒近いギャップを構築しての“ライト・トゥ・フラッグ”を達成。初ポールを勝利に換える盤石のドライビングを披露した。

 そのまま午後に実施されたレース2でも、リバースの10番グリッドから出たバリオは、7周目には6番手に浮上してチェッカーを受け、混戦でも勝負が可能なリライアビリティを確認することに。

 また、この第7戦の週末を終えたシリーズは、10月8~9日にサンフアンで開催される今季最終戦を前に「大幅に規模を拡充した」2023年カレンダーを発表。ここまで協議が続けられてきたTCRブラジルの創設に伴い、サウスアメリカ全12戦のうち5戦を併催することとし、スプリントシリーズはアルゼンチンで3戦、ウルグアイで1戦、残り4戦をブラジルで開催する合計8ラウンドと16のヒートを予定する。

 そして今季も2戦が実施されたエンデュランスシリーズは、アルゼンチンで2戦、ウルグアイで1戦、ブラジルではフィナーレを含む合計4戦を計画し、レース時間も現在の60分から100分に延長され、給油と必須のピットストップが追加される。

17周を走破したバリオの『トヨタ・カローラGRS TCR』は、2位ロッソに2.997秒、3位ウルティアに約20秒近いギャップを構築しての“ライト・トゥ・フラッグ“を達成した
「クルマには満足しているし、決勝も自信を持っているよ」と語っていたホルヘ・バリオ。初ポールを勝利に換える盤石のドライビングを披露した
レース2はラファエル・レイス(W2プロGP/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が勝利を飾っている

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