映画「島守の塔」報告会、退造の誕生日に母校宇都宮高で【動画】

荒井退造の母校宇都宮高で開かれた映画「島守の塔」報告会=22日午後2時45分、宇都宮市滝の原

 太平洋戦争末期の沖縄県知事島田叡(しまだあきら)と警察部長荒井退造(あらいたいぞう)(宇都宮市出身)らの姿を通して命の尊さを伝える公開中の映画「島守の塔」の事業報告会が、荒井の誕生日である22日、母校の宇都宮高で開かれた。当初の想定より上映館が拡大している興行の現状報告のほか、制作プロデューサーによる秘話を交えた講話や関係者の座談会が行われた。参加した協賛社や行政関係者ら70人は、2人の思いを継承する必要性や作品が持つ意義を再確認した。

 興行面では当初の想定の倍以上となる35都道府県に公開が広がり、「ミニシアターランキング」で7週連続5位以内に入ったことなどが事務局から紹介された。新型コロナウイルス禍に伴う制作断念の危機から全国約150の協賛社、個人サポーターの寄付4千口などの協力で完成にこぎ着けた経緯も明らかにされた。

 プロデューサーの川口浩史(かわぐちひろふみ)さん(52)は、資金が潤沢にない中で質の高い作品を作る苦労を語った。「日本一忙しい女優」と称される吉岡里帆(よしおかりほ)さんのスケジュールを短期間だけおさえられ、そこから逆算で撮影計画を考えたり、「なるべく栃木で撮れる態勢をつくった」と効率的なロケに組み替えたりして乗り切った工夫や裏話を披露した。

 座談会では、宇都宮高元校長の斎藤宏夫(さいとうひろお)さん(65)と県立博物館主任研究員の小柳真弓(こやなぎまゆみ)さん(44)が登壇した。下野新聞社の江田和宏(えだかずひろ)常務取締役主筆とのやりとりで、荒井の生い立ちや人物像、同校で継がれる「瀧の原主義」の影響に触れ、「若い世代に見て、考えてもらいたい」「映画で終わりではなく学びの継続が大切」と思いを語った。

 報告会の冒頭、同社の若菜英晴(わかなえいせい)社長が「ロシアのウクライナ侵攻が続く中、多くの人に作品を見てもらい、日常の貴重さ、平和や命の大切さを伝えていきたい」とあいさつした。閉会時には岸本卓也(きしもとたくや)会長が制作協力への感謝を述べた。

映画の制作エピソードなどが披露された報告会=22日午後1時55分、宇都宮高講堂

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