大谷吉継が持ち帰ったと伝わる「朝鮮鐘」修復終える 福井県・常宮神社の国宝、9月23日から公開

保存修理を終え、収蔵庫に設置された国宝の朝鮮鐘=9月22日、福井県敦賀市の常宮神社

 敦賀城主の大谷吉継が朝鮮半島から持ち帰ったと伝わる福井県敦賀市の常宮神社所蔵の国宝「朝鮮鐘(ちょうせんしょう)」が9月22日、保存修理を終え、境内にある収蔵庫に戻された。専門機関によるさびの除去などにより、胴部に彫られた天女や江戸期の拝観者が残した墨書が鮮明となった。23日から一般公開する。

 鐘は1597年、豊臣秀吉の朝鮮出兵で半島に行った大谷吉継が持ち帰り、奉納したと伝わる。高さ111.5センチ、口径66.7センチ、口厚6センチの青銅製。銘文には833年、新羅時代の朝鮮半島で造られたとある。国内にある半島由来の鐘の中で最も古く大型の部類とされる。1952年に国宝に指定された。

 2021年5月、文化財の修繕を専門にする公益財団法人「元興寺文化財研究所」(奈良県奈良市)の職員らが同神社を訪れ、朝鮮鐘を運び出した。全体のさびの除去や薬剤による防さび処置を行った。収蔵庫は扉や屋根、床の改修を行い、展示台は新調した。

 費用は1795万円。国が1495万円、福井県153万円、敦賀市131万円を負担した。さび除去により鮮明になった墨書は天保年間(1830~44年)に参拝者が記した“落書き”と見られ、引き続き解読を進める。さびの成分分析による鉛の産地は、銘文に記された製造地域と食い違いがないことも判明した。

 22日は同研究所職員5人が約3時間かけて収蔵庫内に慎重に設置した。作業を見守った宮本民雄宮司は「ありがたいの一言(いちごん)。拝観者に気持ちよく見てもらえるよう管理していく。(同神社の)安産信仰と花木、国宝の鐘で神社を守っていきたい」と話していた。

 一般公開は午前9時~午後3時で、拝観料大人300円、小学生以下100円。

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