秋はみんなでサイクリング!

秋も深まってきた今日この頃。風を感じながら気持ち良くサイクリングするのはいかが? 今号は、知れば乗りたくなるニューヨークならではの自転車の楽しみ方を紹介する。(取材・文/中沢絵里奈)


スポーツの秋に最適!

いろいろ楽しめる自転車の魅力

エリアごとに異なる街並みが楽しめ、近距離移動も多いニューヨーク市内では、気軽に乗れる自転車が重宝する。

効率的で財布や環境にも優しい。そんなメリットいっぱいの自転車の魅力を自転車愛好家の向井太(ふとし)さんに聞いてみた。

―自転車の楽しみ方とは?

代表的なものはサイクリングやレースです。レースはロード、サイクロクロス、タイムトライアル、ヒルクライムとさまざまな方式で走行タイムを競うものがありますが、大けがの危険も伴うので初心者にはあまりおすすめできません。ニューヨークでは毎年5月に開催される市内5区を自転車で疾走する「ファイブ・ボロー・バイク・ツアー」などのロングライドのイベントも多いので、参加してみると楽しいと思います。

それからゆるぽた(ゆるいポタリング)やカフェライドと呼ばれる自転車でのんびり散歩したり飲食したりする走り方もあります。

レースにも参加する向井さんのチームの走りは息ぴったりだ

―初心者はどのように始めればいいですか?

一人で自由に走るのは楽しいですが、集団で走るグループライドもまた違った魅力がありますよ。みんなで一緒に同じ目的地を目指し、誰も置いてきぼりにならないようチームワークを発揮しながら走るのはソロライドでは味わえない喜びと爽快感が感じられます。

チームで走る際、先頭ポジションは風の抵抗が強いため事前にローテーションを決めておきますが、慣れてくると「先頭が疲れてそうだな」と感じたら自然と前に出て交代してあげるといったあうんの呼吸も生まれてきます。「集団で走る」という意識が重要ですが、情報交換もできますし、グループライドから始めてみるのもおすすめですよ。

―どんなチームで走っていますか?

僕が経営する保育園「スターチャイルド」をスポンサーにしたチームを結成しています。これはニューヨークの自転車イベントを取り仕切るセンチュリー・ロード・クラブ・アソシエーション(CRCA)認定の唯一の日系チームで、日本人を中心にいろんな職種、人種の13人ほどのメンバーが毎週末集まって楽しくライドしています。

―ニューヨークを走行する上で注意すべきことは?

多くの道路で自転車専用のレーンが設置されているものの、車、バイク、歩行者と交通量が非常に多いマンハッタンは危険がつきものです。自転車に気付かず左折する車に巻き込まれてしまうことも。スピードを出し過ぎず、常に前後左右を確認して安全に注意しなければなりません。最近はシティーバイクでもEバイクを提供していますが、電動自転車は想像以上にスピードが出るので特に気を付けてほしいですね。

電動アシストの付いたEバイクは、スピードの出し過ぎに注意しよう

―おすすめの自転車は?

ニューヨークは舗装されていない凸凹道も多く、舗装路を速く走ることを目的にしたロードバイクでは、タイヤが細過ぎて石畳や側溝にハマってしまうことも多く危険です。タイヤが太めの山道用のグラベルバイクならサスペンションも効いていて、乗っていて体も痛くないので街乗りに適していると思います。

―自転車の魅力とは?

行き先や速さも自分次第で、自分の脚でこいだ分だけ進める。それから健康にもすごく良いです。ランニングよりも脚への負担は自転車の方がはるかに少ないんですよ。安全を第一に、自転車を楽しむ仲間がもっと増えてほしいですね。

向井太さん

1990年に来米。
イーストビレッジにある日系保育園「スターチャイルド」園長。
50歳から本格的にロードバイクを始め、2019年にチーム・スター・チャイルドを発足。
地元のアマチュアレースからカフェライドまで幅広く活動する。
現在同チームではメンバーを募集中。
自転車を始めたい人、ライドやレースに興味のある人は下記のEメールまで!

Eメール: futoshi.mukai@gmail.com
ウェブ: Starchildny.com

おすすめのサイクリングコース

ニューヨークでサイクリングするにはどこを走ればいい?おすすめの定番コースを向井さんが教えてくれた。


ハドソンリバーをひたすら北上!

自転車専用レーンが延びる9Wを走る

「マンハッタン内は車や歩行者が多過ぎるので、本当の自転車の爽快感はなかなか味わえないんです」。

そう語る向井さんが勧める市内の自転車コースは、マンハッタン西側の川沿いにあるハドソン・リバー・グリーンウェーだ。この道路は、島の南端バッテリーパークからインウッドをつなぐウォーターフロントの自転車やスクーター専用のレーンとなっており、車と接触する心配がないサイクリングロードとして親しまれている(歩行者の飛び出しには注意しよう)。

緑豊かな草木に囲まれた同レーンは下りと上りの両車線があり、晴れた日には美しいハドソンリバービューとニュージャージーのビル群を川越しに一望できるのも魅力だ。

ちなみに東側にも同様にイースト・リバー・グリーンウェーがあるが、37丁目から60丁目までが途切れているため、一気に駆け抜けたいならハドソンリバー側がおすすめとのこと。

景色を楽しみながら走行できるハドソン・リバー・グリーンウェー

気分に合わせてコースの長さは自由にカスタマイズ!

さらに本格的にサイクリングを楽しむなら、セントラルパークを越え、ジョージ・ワシントン・ブリッジを渡ってみよう。マンハッタンの美しい摩天楼を横目にニュージャージー州フォートリーに入れば、広々とした自転車道が設置されたルート9Wに合流できる。そのまま北上し、ニューヨーク州とニュージャージー州の州境を越えた先にあるカフェ「ザ・9W・マーケット」が見えたら休憩スポットに到着だ。

もちろん疲労を感じたらこの辺りで引き返しても良し。「まだまだ行ける」と感じたら、そこからさらに北上してハドソン川沿いにある小さな街、ピアモントにあるフライウィールパークやナイアックのメモリアルパークに立ち寄ってみよう。地元のレストランやカフェ、ベーカリーなど趣のある街も堪能できるだろう。

ここまでで往復約50マイル(約80キロメートル)以上のサイクリングとなり、かなりの達成感が得られるはず。「もし100マイル(約160キロメートル)コースに挑戦したかったら、そのままさらに北上してベアーマウンテンを目指してみてください」と向井さん。

このハドソンバレーにそびえる標高1200フィートの山、ベアーマウンテンは世界的なアマチュアレース「グランフォンドニューヨーク(GFNY)」が開催される場所としても有名だ。平坦な道ではなく、アップダウンのある山道、砂利道を乗り越えなければならないが、その先には壮大な湖や紅葉、山頂といった絶景を楽しめる。

マンハッタンの喧騒(けんそう)から離れて、自分の脚でこぎながら自然や風を生で感じる気持ち良さは自転車に乗ってでしか味わえない。

次の週末には思い切ってサイクリングで郊外まで足を伸ばしてみては。


きちんと守ろう!

ニューヨークの自転車交通ルール

■歩道ではなく車道を走行する
■車の信号機に従う
■自転車専用レーンがない場合は道路の右側を走行する
■走行中、両耳をふさぐイヤホンやヘッドホンは禁止
■自転車ベルを装着する
■ヘルメットの着用を推奨(14歳以下は必須)
■Eバイクで自転車レーンを走行する際は時速30マイル以下を維持しなければならない

市内の自転車レーン情報をチェック!

NYC BIKE MAPS
nycbikemaps.com


「ストリクトリーバイシクルズ」って?

ジョージ・ワシントン・ブリッジを渡った付近にあるのがバイクショップ「ストリクトリーバイシクルズ」だ。自転車やアイテムを販売する他、熟練のスタッフが修理・点検も行ってくれる。市内ではハドソンヤードにもショップがある。

Strictly Bicycles: 2347 Hudson Terrace, Fort Lee, NJ 07024/TEL: 201-944-7074/WEB: strictlybicycles.com

スポーツバイクに乗ってみよう!

シティーバイクも良いが、高機能を備えたスポーツバイクもおすすめだ。用途や予算別に自分に合ったバイクを探そう。


走行スピードは随一!

ロードバイク

舗装路でスピードが出せるタイヤの細さと20段前後ともなるギア変速数の多さが特徴。ドロップハンドルで前傾姿勢を取りやすく、風の抵抗も受けにくい。フレームにはアルミやスチールを使用した軽量さから、長距離の本格サイクリングやレースに適している。価格は1000ドルを超えるものが多い。

Photo by Specialized

アレッツスポーツ(スペシャライズド)/1400ドル


キャンプやレジャー向き

グラベルバイク

砂利道などの未舗装路を走行できるように設計されており、太めのタイヤやぬれた路面でも止まりやすいディスクブレーキを搭載している。ドロップハンドルの本格仕様でキャンプなどのアウトドア向けだが、舗装路の街でも乗り疲れせずに走れるハイスペックさが人気。価格の目安は1300ドル以上となる。

Photo by Cannondale

トップストーン4(キャノンデール)/1325ドル


通勤や街乗りに

クロスバイク

ロードバイクとグラベルバイクの特徴を掛け合わせたハイブリッドタイプ。英語ではハイブリッドバイクと呼ばれる。グラベルバイクよりもスピードが出せ、太めのタイヤと広めに設定されたフラッドバーハンドルにより、未舗装路でも安定した走行ができる。価格はロードバイクよりも手頃で500ドル台からある。

Photo by Trek

FX 1(トレック)/599ドル99セント


便利なコンパクトサイズ

ミニベロ

フランス語で「小さい自転車」を意味するミニベロは、タイヤが20インチ以下のものを指す。折り畳みタイプも多く、収納スペースの節約、車、電車への持ち運びにも便利だ。小回りが効く他、こぎ出しが軽いのもメリットといえる。長距離走行には不向きだが、信号や曲がり角が多いニューヨークの街乗りでは重宝する。

Photo by Tokyobike

ミニベロ(トーキョーバイク)/900ドル


ライドイベント情報

ニューヨークではさまざまなライド(サイクリング)大会が開催されている。市内の大きなライド大会はほぼシーズンを終えてしまったが、ローカルのイベントは随時開催しているので気軽に参加してみるのもいいだろう。

Photo by USA Cycling

ロボ・セントラル・パーク・ラップス

【開催日】9月29日(木)午前5時45分〜
【場所】セントラルパーク内
【距離】24マイル
【参加費】New York Cycle Clubへの入会(トライアル1ドル)

バイク・ザ・ブロック・マンハッタン

【開催日】10月2日(日)正午〜
【場所】パークアベニュー(116〜125ストリート)
【距離】0.5マイル
【参加費】無料

サイクルNY・ロング・アイランド・ライド

【開催日】10月9日(日)午前8時30分〜
【場所】ロングアイランド(ストーニーブルック)
【距離】25マイル/50マイル
【参加費】80ドル(ランチ、飲み物付き)

ツール・ド・ブロンクス

【開催日】10月23日(日)※時間は後日発表
【場所】ブロンクス区内
【距離】10マイル/25マイル/40マイル
【参加費】無料

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