年間10万トン廃棄されているコーヒーカプセル スイス企業が海藻由来の膜で包むコーヒーボールを開発

手軽で美味しいカプセル式コーヒーだが、アルミ製やプラスチック製のカプセルの廃棄量は世界で年間10万トンにも上るという。近年、リサイクルカップや生分解性の容器も登場しているが、それでも大半は埋め立てられている。こうした流れに、スイスの小売大手ミグロが一石を投じた。同社はこのほど、カプセルを使わないコーヒーボールを開発した。

ミグロが展開するカプセル型コーヒーのブランド「CoffeeB」は、プラスチックやアルミ製のカプセルを使わずにコーヒーを淹れられる、ゴミを出さない製品だ。コーヒーボールを共同開発したキャロライン・シーファース博士は「5年間の研究期間を経て、次世代のカプセル型コーヒーが誕生した。カプセルコーヒーの飲み方に世界的な革命を起こすだろう」と語る。

味はそのままで、廃棄物はゼロに

カプセル式コーヒーは1986年に同じくスイス企業から発売された。それから36年が経ち、スイス最大の小売業者ミグロは5年の開発期間の末、新たな製品を考案し、特許も取得した。

新たに開発したCoffeeBで、圧縮したコーヒーボールを包むのは、風味を損なわないように設計された、無味無色で海藻由来の膜だ。味のブラインドテストで、CoffeeBはこれまでのコーヒーカプセルと同等の性能を示した。

植物からできた薄い膜は消滅せず、従来のようにコーヒーメーカーに残る。これまでと異なるのは、カプセルもコーヒーかすも全て庭でコンポスト(堆肥化)できるということだ。同社によると、4週間で貴重な腐植土に分解される。一方で、生分解性プラスチックのカプセルは完全に分解されるまでに数年とは言わないまでも数カ月はかかるという。

「コーヒーカプセルの廃棄物は世界で日々274トンも発生している。プラスチックとアルミニウムの容器をなくすことで、カプセル型コーヒーの最大の課題の一つである廃棄物をなくすことにつながり、消費者はより環境に配慮し続けることが可能になる。CoffeeBが、コーヒーの飲み方を地球に配慮したものに変える大きなきっかけになれたら」とシーファース博士は語る。

CoffeeBを使うには専用のコーヒーメーカーが必要だが、同社はこのノーカプセル・システムが将来的には標準になると見ている。

コーヒーメーカー自体も持続可能性を考慮したデザインに

CoffeeBでは、コーヒーメーカーの機器自体も持続可能性を考慮した設計になっている。電子廃棄物をさらに減らすことを目的に、コーヒーメーカーには部分的にリサイクル素材を使用し、簡単に修理ができる設計にした。さらにモジュラーデザインを採用し、必要に応じて部品を交換できるようにしている。コーヒーメーカーの梱包材もリサイクル可能なものを採用し、省エネ評価もA+を誇る。

CoffeeBの責任者を務めるフランク・ワイルド氏は、「カプセル型コーヒーの利便性を失わず、持続可能なコーヒーを楽しめる環境の実現を目指してきた。開発の過程がいつも上手く進んできたわけではないが、廃棄物の出ないコーヒーカプセルを開発するというビジョンはずっと強く抱いてきた。当社の歴史のなかでも最も重要な製品イノベーションだ」と語った。

このほか、CoffeeBは全自動コーヒーメーカーやコーヒープレス、フィルターコーヒーと比較して、1杯あたりのコーヒー豆の使用量も大幅に削減。CO2排出量を40%減らすことに成功した。

コーヒー豆はまず8種類のブレンドが発売される。その豆もレインフォレスト・アライアンス認証を取得したものか有機のいずれかで、さらにフェアトレードのものを採用し、持続可能な調達を行っている。

コーヒーボールはリサイクルできる厚紙の箱に9個入れられており、スイスでは4.60フラン(約684円)で販売。専用のコーヒーメーカーはブラックとホワイトの2色があり、価格は169スイスフラン(約2万5164円)だ。

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