アシックス、温室効果ガス排出量が世界最小のスニーカーを開発

アシックスはこのほど、温室効果ガス(GHG)の排出量を、情報が開示されている世界のスニーカーの中で最も低く抑えたスニーカーを開発した。製品のライフサイクルにおける材料調達と製造、輸送、使用、廃棄の4段階における削減策を特定し、履き心地や品質を損なうことなく、高いレベルでのサステナビリティを体現したもので、これまで最小とされていたGHGの数値を2キログラム以上下回る、1.95キログラムCO2e(二酸化炭素換算)を実現したという。(廣末智子)

商品名は、「GEL-LYTE Ⅲ CM 1.95(ゲルライトスリーシーエム1.95)」。2023年に発売予定で、価格は150米ドル(約2万1500円)程度を想定している。

同社は2010年から2012年にかけて、米マサチューセッツ工科大学との共同で、製品のライフサイクルにおける排出量の測定や削減方法に関する分析と改善策の研究を行い、主に生産活動における環境負荷の低減に成功。そこで得た知見をもとに、製品の輸送プロセスや、焼却、埋め立てなど実際の廃棄方法に即した排出量の計算精度を高めるなど、独自の削減策の確立に取り組んでいた。

今回、特に力を入れた点は、スニーカーのミッドソールと、中敷に使用しているカーボン・ネガティブ・フォームの開発で、サトウキビなどを原料とした複数のバイオベースポリマーを配合している。サトウキビは成長過程でのCO2吸収量が大きく、フォーム材をつくる過程におけるCO2排出量を上回ることから、カーボンネガティブを実現できたという。

また主要なアッパーと中敷には、原料自体を着色してから製品化するソリューションダイという独自の技法を施したリサイクルポリエステルを使用。アッパーの補強には、廃棄ロスの少ないテープ状のパーツを必要な量だけカットし、折り返して使用するなど、材料の廃棄を最小限に抑えつつ、フィット感やサポート性を確保することに留意している。

新商品の発表会で、吉川美奈子サステナビリティ統括部長は、同社のスニーカーが世界最小のGHG排出量を打ち出したことについて、「2050年までに排出量実質ゼロを目指す上で重要なマイルストーンであり、今後はこの製品から得た削減施策や学びをより多くの製品で展開し、さらに進化させていきたい」と強調。その上で「業界にとってはベンチマークになる数字だ」とも述べ、スニーカーの環境負荷低減策を巡る業界のサステナビリティを同社がけん引していく意欲を見せた。

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