不妊治療が健康保険適用に。医療保険でも給付金を受け取れる可能性も

日本では、不妊について心配したことがある夫婦は35%いるそうです。また、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は18.2%で、夫婦全体からみると5.5組に1組の割合です。それだけ多くの方が、不妊についての悩みを持っています。

いままでの不妊治療は、体外受精などの診療は自費だったので、高額な費用がかかっていました。自治体などの助成金もありましたが、それでも立て替える必要や所得制限などの条件がありました。そのため、高額な治療費が負担になり、あきらめる方も多かったと思います。

でも、2022年4月から不妊治療が保険適用になりました。これは、じつに朗報です。一般の治療と同じように、病院の窓口では3割負担で受診できることになり、かなりハードルが下がったといえます。

さらに高額な費用がかかったとしても、高額療養費制度があるので負担額に上限があります。つまりお金の心配をあまりせずに治療に専念することができるようになったのです。今回は、不妊治療の現状と医療保険について説明していきましょう。


保険適用となった不妊治療とは

体外受精などの不妊治療における基本治療はすべて保険適用になりました。
具体的には、下記の治療です。

一般不妊治療:タイミング法・人工授精
生殖補助医療:採卵術、精巣内精子採取術、体外受精、顕微授精、受精卵・胚培養、胚凍結保存、胚移植術

保険適用の要件としては、「治療開始時において女性の年齢が43歳未満であること」があります。また回数の上限は、初めての治療開始時点の女性の年齢が40歳未満であれば通算6回まで、40歳以上43歳未満では、通算3回までです。

オプション治療については、「先進医療」として保険と併用ができるものもあります。先進医療にゆる不妊治療関連の技術は、下記の8つの技術です(令和4年5月1日時点)

・ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術
・タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養
・強拡大顕微鏡を用いた形態学的精子選択術
・子宮内細菌叢検査
・子宮内膜刺激術
・二段階胚移植術
・子宮内膜受容能検査
・子宮内膜擦過術

医療保険でも給付金の対象となる

それでは、生命保険ではどうなっているのでしょうか?

医療保険に加入している場合には、手術給付金として受け取ることができます。不妊治療は、通院での治療が多いと思いますが、外来手術も多いので、この場合には手術給付金を受け取ることができます。

医療保険に加入している方は、給付金の請求を忘れないでください。住友生命の医療保険やメディケア生命の医療保険などの多くの医療保険は、保険適用になった不妊治療を行った場合には、医療保険の給付金を受け取ることができます。しかし、一部の医療保険では、「体外受精」「顕微授精」「受精卵・胚培養」「胚凍結保存」などは、対象外になる商品もあります。ご自分が加入している保険会社に適用範囲を確認しておきましょう。

また、不妊は、男性側に原因があるケースもあります。その場合も、アクサ生命の「スマート・ケア」のように、男性の不妊治療に対しても給付金が出る商品もあります。

不妊治療と仕事の両立は大変

このように治療費の面では、不妊治療が受けやすくなり、ハードルは下がりました。ただ、仕事と治療を両立させるという問題が残っています。

厚生労働省の「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合調査(平成29年)」によると、仕事と不妊治療の両立ができている人は約半数の53.2%です。両立できずに仕事を辞めた人は15.8%、両立できずに不妊治療をやめた人は10.9%、両立できずに雇用形態を変えた人は7.9%です。

両立ができない理由としては、「精神面で負担が大きい」「通院回数が多いため」「体調、体力面で負担が大きい」が挙げられています。

企業の体制として、不妊治療の支援を行っているのは約3割しかありません。つまり、世間の不妊治療への理解は、まだまだ足りないのが現状です。

治療と仕事を両立するためには

まずは、いま働いている会社の制度を確認してみましょう。

「不妊治療休暇・休職」の制度を導入していないか、時間単位で働ける「フレックスタイム制度」などで、出退勤の時間を調整できないかなどです。

あるいはプライバシーの問題もありますが、上司などと情報を共有しながら、場合によっては人事労務の担当者に相談をしてもおくのもよいでしょう。

また、企業に対して不妊治療中であることを伝えたり、不妊治療と仕事の両立に関する理解と配慮を求めたりするために、厚生労働省が作成した「不妊治療連絡カード」というものがあります。それらを利用してみるのも一つの方法です。

まずは、ひとりひとりが不妊治療に対する理解を深めていただくのが近道です。

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