北朝鮮軍で横行「産婦人科検査」という名の鬼畜行為

朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の総政治局が8月、全軍団司令部の政治部、幹部部(人事部)の養成課に次のような指示を下したと、デイリーNKの内部情報筋が伝えている。

「男性99号検査、女性産婦人科検査を、指示があるまで当分の間行わないこと」

何のことかというと、兵士が性感染症にかかっているかどうかの検査を中止しろという意味だ。ちなみに「男性99号検査」とは梅毒の検査のことだ。

この指示の背景には、ある事件があった。

航空・反航空軍(空軍・防空軍)の司令部直属の区分隊で7月、ひとりの男性兵士が自ら命を絶った事件については本欄でも伝えた。

彼は「養成指導員が検査室に同行して行われた梅毒検査は、生まれて初めての辱めと苦痛で、もはや軍での勤務はできなくなった」という内容の、遺書のようなメモを残していた。養成指導員とは、幹部の人事を司る幹部部の養成課の人員のことだ。兵士はこの指導員と軍医から、「梅毒検査」と称して性的虐待を受けていたのだ。

指導員と軍医は軍保衛部によって逮捕されたとのことだが、どのような処分が下されたかは詳らかでない。

2人は、軍機紊乱容疑で軍検察所に身柄を拘束され、予審(起訴前の追加取り調べ)を受けている。

ただ、総政治局はこの事件を重く見たようで、「長年、下戦士(末端の兵士)を真の革命同志と考えない軍官養成部門の幹部の腐敗、堕落ぶりを見せつけた事例」だと批判し、冒頭で述べた指示を下したとのことだ。

指示にはまた、身体検査を行うにあたっては、軍医が所見書を発行した場合に限ること、検査に同行したことのある養成課の担当者に警告処分を行うこと、女性産婦人科検査は早期の廃止を検討すること、などといった内容も含まれているという。

この指示の内容を見る限り、軍内では女性兵士に対しても、「産婦人科検査」を口実にした性的虐待が横行していたと見られる。

朝鮮人民軍では、上官が部下に性暴力を振るう事態が続発していると言われるが、特に女性の場合、被害者であるにもかかわらず、落ち度があったとされる社会的風潮があるため、なかなか言い出せない。

軍のような閉鎖的な空間ではなおさらだ。しかし遅まきながら、総政治局がこうした指示を下したということは、状況を改善すべきとする問題意識が芽生えているのかもしれない。

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