16人犠牲の相模原・鳥屋地域 「山津波」を記録で伝承 ドキュメンタリー作品のDVD作成し配布

「鳥屋・地震峠を守る会」から表彰状を贈られた荒金さん=相模原市緑区鳥屋

 関東大震災で「山津波」が発生し、16人が犠牲となった相模原市緑区の鳥屋地域で、災禍の歴史を学び直そうという動きが広がっている。きっかけとなったのは、被災者の体験談などをまとめた1本のドキュメンタリー。作品を鑑賞した遺族や地元住民らが「後世に伝えるための教材としたい」と制作者や区に協力を依頼し、DVDを作成した。地元の自治会や小中学校に配布し、今後は上映会も検討している。

 鳥屋地域は1923年9月1日の関東大震災で山の斜面が崩落する山津波が発生し、16人が命を落とした。8人は行方不明のままで、土砂が堆積してできた小高い山は「地震峠」と呼ばれるようになった。

 作品は、地震峠の由来を知った荒金忠司さん(83)=同区下九沢=が2012年に制作。震災当時14歳で、姉を山津波で失った新井エツさんの証言を収め、同年、緑区のショートフィルムフェスティバルのドラマ以外の部門で大賞を受賞した。

 新井さんは16年に108歳で亡くなったが、息子の勲さん(79)は「貴重な証言を残してくれた」と感謝。別の遺族の小島信彦さん(69)も「作品は『被害を風化させてはならない』という遺族の思いを代弁してくれた。地域で震災の記憶を後世に残していこうという機運が一気に高まった」と語る。

 昨秋、鳥屋地域で作品の上映会を開催したところ「地域の教材として共有してほしい」との声が上がり、鳥屋地域振興協議会がDVD化を検討。荒金さんと緑区の協力を得られたことから、作品をDVDに収め、11自治会と鳥屋小中学校に配布した。

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