24年ぶり145円台のドル高円安、為替変動が好機となるFX取引のリスクと注意点

記録的な円安が止まりません。9月7日(水)には1ドル=144円台を記録。1998年8月以来24年ぶりの円安水準を再び更新しました。

そして9月22日(木)にFOMCの結果を受け、ドル円は145円という24年ぶりの水準をさらに超え146円に迫る勢いでしたが、夕方ごろに円買い介入が1998年6月17日(水)以来、約24年3カ月ぶりに行われて、一気に5円ほど下落する場面もありました。

値動きが激しい=ボラティリティが高い状況が続いていますね。


円安の背景と経済への影響

この円安ドル高は、日米の金融政策の差が大きな要因として挙げられるでしょう。アメリカは今年3月から金融引き締めに入っています。9月21日(火)、22日(水)のFOMCは予想通り0.75%の利上げとなり、3回連続のトリプル利上げ(通常の利上げは0.25%)となっています。

9月FOMCでは政策金利が2022年末で4.4%、23年末は4.6%を見込んでいることが明らかとなっています。パウエルFRB議長は痛み無しでインフレを抑制することはできない、インフレ圧力は引き続き顕著なので引き締めスタンスを継続するという姿勢です。

一方で日本は金融緩和政策を継続しています。9月21日(水)の日銀金融政策決定会合では金融緩和の維持が決定となりました。黒田総裁の記者会見でも、金融政策を見直す(利上げをする)可能性は当面ないと断言しています。

スイス国立銀行は9月22日(木)16時半に政策金利を従来のマイナス0.25%からプラス0.5%に引き上げる(0.75%の利上げ)を決定。8年近くにおよんだマイナス金利政策は終了することとなり、主要国でマイナス金利政策を継続しているのは日本のみということになります。

日米の金融政策の差によって米ドルの金利が高く、日本円の金利が低いため、有利な金利である米ドルの資産の比率を増やそうとする動きが活発となり、ドル高円安になるということです。

この状況に、元財務官で1995年の円高懸念が高まった際に為替介入を主導し「ミスター円」と呼ばれる経済学者・榊原英資氏が、2022年末までには160円ぐらい、2023年末には180円くらいまで円安が進行するのではないか、との見解を示したことが報じられています。そこまで円安が進行するかはわかりませんが、円安は私たちの生活にも大きな影響がありますよね。

円安ということは世界の通貨と比べて円が弱くなっているので、輸入品が上がったり海外旅行で買い物が高く感じたり、円だけで資産を持つことへの不安も感じていらっしゃるかもしれません。

すでに大きく円安に動いていますが、今後もさらに円安になるなら、何かしないといけない……と考えている方も多いのではないでしょうか?

為替変動が好機となるFX取引

前置きが長くなりましたが、円安など為替が変動するタイミングで利益を得るチャンスがある取引の選択肢としてFX取引があります。

Foreign Exchangeの頭文字をとってFXと言い、外国為替取引を意味しますが、外国為替証拠金取引を指すのが一般的です。証拠金で日本円や米ドル、ユーロ、ポンドドル、豪ドルなどの通貨を売買する取引のことをFX取引と呼びます。

FX取引は、主に為替の変動による、通貨の売買での差益(為替差益)を狙う投資手法です。

安く買って高く売る、という基本は株式投資などと同様ですが、高く売って安く買い戻すという下落でも利益を得やすい取引でもあります。株式投資では信用取引のハードルが高いのか、下落を利益にする取引をされている方は少数派のように感じます。

また証拠金取引であり、証拠金は担保のようなもので、元手の資金以上の取引をする=レバレッジをかけることができるので、少ない資金で何倍ものお金を効率よく運用することが可能です。利益だけでなく、思惑と外れたら大きな損失をこうむるリスクも高くなりますが、適切なレバレッジをかけるということは投資効率を考えても大切なことです。

FX取引におけるレバレッジについて、金融庁のレバレッジ規制により国内FXの最大レバレッジは25倍と定められています。担保となる証拠金の最大25倍の金額を取引することができ、損失が発生すれば預けている証拠金からその分が差し引かれ、利益が出た場合は証拠金が増えていきます。レバレッジ25倍で証拠金が10万円だと25倍の250万円分の取引ができることになりますが、その分リスクも高くなりますので、余裕を持った投資資金、証拠金でやることを心がけてください。

余談ですが、私はFX 取引の練習はデモトレードからやり、少し上手くなってきたら実際の取引を1,000通貨で練習し、今は1〜2万通貨でデイトレ(寝る前に手仕舞う)を基本としてトレードをしています。参考になれば幸いです。

FX取引は外貨預金に比べると為替手数料がかなり安いので、レバレッジでの取引は怖い・ハードルが高いという方でも、手数料を安く外貨預金のような取引をすることも可能となっています。1倍や3倍など、レバレッジを自分で調整する形で外貨預金のようにトライしてみることも資産のヘッジにはなると思います。

また、為替差益以外にも外貨預金の金利のように、スワップポイント(金利差収益)による利益も狙うことができます。FX取引では2国間の通貨の交換と金利の交換も行うため、金利差の調整額であるスワップポイントを金利のように受け取ることができるのです。日本は低金利ですので、外貨を買うとスワップポイントもつく……というイメージです。

FX取引の手数料ですが、国内のFX会社では取引手数料は無料の会社が多いです。ただ実質的なコストとしてスプレッドというのがあります。通貨の売値と買値の差のことで、これが実質的なコストとなります。

なお、為替レートは取引会社によって異なることがあります。また通貨価値はその国の経済状況の影響を大きく受けるので、まずは取引の前に通貨やFX会社について調べることをおすすめします。

9月19日週「相場の値動き」おさらい

9月23日(金)が祝日で休場だったため、9月22日(木)の日経平均株価は、前日比159円30銭安の2万7,153円83銭と続落。9月16日(金)の日経平均株価は2万7,567円65銭とでしたので、週間では413円82銭の下落となりました。

本稿でお伝えした通り、9月FOMCでは予想通り0.75%の利上げとなりました。政策金利の見通しは引き上げられており、パウエルFRB議長の発言ではジャクソンホール会議同様に痛み無しでインフレを抑制することはできないと積極的な利上げスタンスとなっていることで、景気後退への懸念から米市場では売りが優勢となりました。

スイス国立銀行は0.75%の利上げを決定。イギリスでは0.5%の利上げと国債の売却の開始を決定しています。一方で日銀金融政策決定会合では金融緩和の維持が決定。世界的な利上げの波が世界経済に及ぼす影響が懸念されるなかで、主要国でマイナス金利政策を継続しているのは日本だけということは改めて抑えておきましょう。

9月22日(木)に政府・日銀による為替介入がありました。介入後に5円ほど下落=円高に進行したことから一時的な効果は出ているように見えますが、日本単独の介入では効果は限定的と言えるのではないでしょうか。鈴木俊一財務相は、状況次第ではさらなる為替介入の可能性も示唆しており、今後の動向に注目です。

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