低コスト、直通運行…肥後大津ルート〝本命〟に 【再検討 アクセス鉄道 熊本空港ー豊肥線】㊤

 JR豊肥線と熊本空港(益城町)を結ぶ空港アクセス鉄道計画で、県が肥後大津駅(大津町)から分岐する案が最も効果的とする再調査結果を公表した。三里木駅(菊陽町)の分岐を軸にした従来計画は見直される可能性が出てきた。周辺では半導体世界大手「台湾積体電路製造(TSMC)」の工場建設が進んでおり、都市交通の体系や地域社会に影響を及ぼすルートの検討作業は新たな局面を迎えている。
      
 「肥後大津ルートは総事業費が最も低額で、費用対効果も最も高いという試算になった」。定例県議会が開会した9日午前。演壇で県政報告する蒲島郁夫知事は、最新の調査で示された肥後大津ルートの優位性を自ら訴えた。

 その3時間後。三里木ルートの地元、菊陽町を訪れた田嶋徹副知事は、町の防災センターに居並ぶ町議らに頭を下げた。「地元に期待させたことをおわびする」。県政トップとナンバー2の言動は、アクセス鉄道のルートの〝本命〟が変わったことを強く印象づけた。

 県が、アクセス鉄道を三里木ルートに絞り込んだのは2018年12月。県民総合運動公園(熊本市東区)付近に中間駅を設けることで、ほかのルートより利用者が多くなり、運動公園のアクセス改善も図れるというのが理由だった。

 ■環境変化

 ところが事業化に向けた取り組みを進めている最中の21年11月、TSMCの菊陽町進出が決定。県は「取り巻く環境が大きく変わった」として翌12月、最寄りの原水駅(同町)からの分岐を含めた三つのルート案の再検討に着手した。

JR豊肥線の肥後大津駅一帯。県の空港アクセス鉄道計画で、肥後大津ルートの分岐点として検討されている=3月、大津町(後藤仁孝)

 その結果はこれまでの試算と一変。多くの項目で肥後大津ルートの有利さを示す数字が並んだ。中でも概算事業費は約410億円と、三里木ルートの約490億円、原水ルートの約530億円を80億~120億円下回ると試算。金額が抑えられた一番の要因は、駅から空港までの線路の延伸距離が約6・8キロと、他の2ルートより約2~2・3キロ短かったためという。

 ただ、肥後大津ルートが以前と今回の調査でほぼ同じ距離だったのに対し、原水ルートは3キロ程度長い約9・1キロに変更され、事業費が大幅に増えた。県交通政策課は「原水駅から最短で進むルートは空港滑走路の真下を通ることになり、トンネル工事の安全確保が難しい」としており、迂回[うかい]する必要が出たためと説明する。

 ■時短効果

 肥後大津ルートのもう一つの強みに挙がっているのが、空港への直通運行を唯一見込めるとした点だ。三里木や原水のルートで直通にすると、利用客の多い肥後大津の便数減少を招くことになるため、JR九州が難色を示している。

 県が視野に入れる快速運行は、直通でなく列車の乗り換えが必要な三里木や原水のルートでは「時間短縮効果が薄れてしまう」と同課。再調査では快速運行による効果を肥後大津ルートでのみ試算し、熊本駅(熊本市西区)から空港までの所要時間が、3ルートで最長の44分から最短の39分に短縮されるとした。

 「肥後大津ルートに将来の発展性を感じる」と、16日の県議会代表質問でも一段と踏み込んだ発言をした蒲島知事。しかし、アクセス鉄道が三里木ルートから肥後大津ルートに変更された場合、イベントで交通渋滞が発生しがちな県民総合運動公園のアクセス改善という、もう一つの建設意義は失われることになる。

 「いずれのルートを選んでも全ての問題をクリアできるわけではない」。県幹部は今後本格化させるルート選定に向け、悩みも吐露する。(内田裕之)

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