<南風>夏の思い出

 沖縄の夏はいつまでをいうのだろう、などとぼんやり考えているうちに、今年の夏の一番の思い出は何だろうとふと思った。すぐに、東京の友人家族が来沖したことが頭に浮かんだ。

 彼らが東京に帰る日の前日、我が家で夕食を囲んだ。友人夫婦と小4、小2の子どもたちの家族は3泊4日の旅程の中で、ひめゆり平和祈念資料館、平和祈念公園、豊見城の旧海軍司令部壕、630事件の慰霊碑がある石川の宮森小学校を訪れたという。「おきなわワールド、美ら海水族館も行った、楽しかった」と子どもたちは元気に教えてくれた。

 談笑中、何か聞こえる!と最初に言い出したのは子どもたちだった。そうだ、今日はナカビー、地元の青年会の道ジュネーが近づいてきたにぎわいが我が家のマンションのベランダまで伝わってきたのだった。あれは道ジュネーと言ってねと、簡単に沖縄の旧盆の説明をしたところ、「近くで見たい」との強いリクエストがあり、急いで外出した。

 久しぶりにすぐ傍らで感じるエイサーは、記憶よりも力強く、美しかった。子どもたちは目を輝かせて見入っていた。居酒屋でも舞台でもなく、地域の道ジュネーを一緒に見られたことがうれしかった。部屋に戻るや上の子が「沖縄の人はすごいよ! 大変な戦争や占領があったりしたのに、伝統を受け継いできているんだ、すごい!」と興奮気味に話してきた。

 翌日、友人家族を見送りに行った際、子どもたちに旅の一番の思い出は?と聞くと、口々に、我が家で時間を過ごしたことと答えてくれた。「また絶対沖縄に来たい」「ありがとうございました」と手を振ってくれる彼らに、私の方こそ楽しい夏休みをありがとう、また今度一緒に“沖縄”を知ろうねと心の中でつぶやきながら手を振り返した。

(林千賀子、弁護士)

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