道の駅で車中泊、どんな人? 尋ねてみたら…浮かぶ人間模様 【あなた発 とちぎ特命取材班】

 「最近、県内の道の駅には車中泊する人がたくさん。どんな人がどんな思いで来ているのか。運営者の受け止めは。トラブルはないのか。調べてほしい」。下野新聞「あなた発 とちぎ特命取材班」にこんな声が寄せられた。現場で車中泊する人たちや運営者に尋ねると、人間模様が浮かび上がるケースもあった。

 国土交通省のホームページを見ると、道の駅は24時間無料で利用できる駐車場とトイレを備えた「休憩」と「情報発信」、「地域連携」の3機能を持つことが定義。栃木県内に25カ所ある。

 8月下旬の午後10時、道の駅うつのみやろまんちっく村(宇都宮市新里町)。

 店舗の営業終了後の時間帯。約50台分の第1駐車場には15台ほどが止まっていた。キャンピングカー、ワゴン車、乗用車-。窓にカーテンなどが付けられ、中は見えない。午前0時までに約20台に増えた。

 妻、娘、愛犬とキャンピングカーで那須に向かう途中の川崎市の男性(61)は、雨上がりの月を見上げていた。ろまんちっく村で温泉や食事を満喫し「全てを済ませて移動せずに寝られるのがいい。駐車場が無料だから、道の駅でお金を使わないとね」と笑った。

 午前0時ごろに到着した埼玉県春日部市の男性(51)も妻と那須に行く道中。「道の駅は休憩所だから」と夕食などは自宅で済ませてから出発した。4、5時間仮眠し早朝に出発する「短期滞在型」で混雑する前に目的地に着く算段だ。

 他にも複数の人が乗る首都圏ナンバーが目立った。

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 9月上旬の道の駅どまんなかたぬま(佐野市吉水町)にも旅行中の車中泊が多かったが、午前0時ごろ、とちぎナンバーの軽乗用車が入ってきた。乗っているのは高齢男性が一人きり。「家族とトラブルがあり、近所だけど、家に帰りたくない…」と打ち明け「たまにここで車中泊する」。

 県外では、ごみや騒ぐ声などが問題視されることもあるが、県内はそうでもないらしい。県道の駅連絡協議会は「車中泊に関する苦情はない」という。

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 県内の道の駅の多くは車中泊を禁止も推奨もしていない。ろまんちっく村の担当者は「うちは施設が多く一日滞在できるのが売り。駐車場も良識の範囲で使ってほしい」と呼びかける。

 身体障害者ら向け多機能トイレのハンドシャワーを風呂代わりに使われ、水浸しになったことがあるという道の駅もあった。

 どまんなかたぬまの川田裕一(かわだひろかず)管理本部部長(48)は「目くじらを立てても仕方ない」と寛容な姿勢。「キャンピングカーの人たちは裕福な人が多く、買い物もしてくれる。駐車場は好きに利用してほしい」

 道の駅湯西川(日光市西川)の担当者は「掃除を考えると故意に汚されるのはつらい」とこぼす。「車中泊には宿代を節約する目的の人も多いはず」と分析。自慢のそばや天然温泉を備えており「ぜひ店舗も堪能して」と期待を寄せた。

 コロナ禍でも自分好みの空間を楽しめる車中泊。利用者側が歩み寄る余地はまだありそうだ。

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