スバルWRX S4のSTIとGTで夏をロングドライブ「美しき日本の海を眺める」

暑い夏と来れば、海水浴場だ。そして雄大な海原に沈む夕陽も見たい。そんなノスタルジーを求めて2台で旅に出た。今回の総走行距離はおよそ1000㎞強。そこで浮かび上がってきたのは、WRX S4が備える快適かつタフな本質である。(Motor Magazine 2022年10月号より)

水平対向エンジンの乗り味をロングツーリングで試す

ロングツーリングが好きだ。私のこの思いに、きっと多くのクルマ好きの人々が共感してくれるのではないだろうか。夢と期待に満ち溢れた旅に、自分のクルマで出かける。長い時間を過ごすうち、これまで気づかなかった魅力を発見して愛情がさらに深まることもあるだろう。

[ 山梨・富士見橋 ] 河口湖から笛吹市方面に北上する国道137号線「御坂みち」を行くと富士山を望めるポイントがある。今回は幸運にもその姿を拝むことができた。

そもそもロングツーリングであれば、好きなクルマといつも以上に長く一緒にいられるのだから、楽しくないわけがない。「クルマ好きはロングツーリング好き」と私が信じる理由も、これでご理解いただけたことだろう。

今回、編集部が用意した「ロングツーリングの伴侶」は、2台のスバルWRX S4だ。モータースポーツのDNAを受け継ぎながらも、「静粛性や乗り心地などのあらゆる性能を磨き上げた」というスバルのAWDパフォーマンスを象徴するモデルである。ボディ形状が実用性に優れた4ドアセダンであるところも、ロングツーリングにぴったりといえる。

それとともに楽しみにしていたのが、水平対向エンジンがもたらしてくれるロングツーリングの快適性にあった。以前、スバルの技術者から「重心の低い水平対向エンジンは、ハンドルの座りを良くする効果があるから、長距離ドライブでも疲れにくい」という話を聞いていたので、今回の旅でこの点も是非、確認してみたいと思っていたのだ。

恵比寿のスバル本社で「STI スポーツR EX」と「GT-H EX」の2台を借り出した取材班は、まず河口湖近くまで移動して撮影をこなすと、進路を北にとって長野県松本市を目指した。

このルートでまず感じたのは、新開発の2.4Lターボエンジンのドライバビリティが優れていること。排気量が拡大されたおかげでボトムエンドから十分なトルクを生み出してくれるうえ、そこから過給器が活躍し始める回転域までの過程が滑らかで、実に扱いやすい。回転バランスが良好なことは水平対向だから当然としても、エンジン音がおしなべて静かなことも、ロングツーリングに好適なキャラクターとして評価できる。

もうひとつ、2台の試乗車には最新のアイサイトXが搭載されていることも心強かった。これがあれば高速道路走行時の速度調整や車線維持をサポートしてくれるのはもちろん、カーブや料金所の手前で自動減速してくれる点も嬉しい。しかも、一定の条件を満たせば渋滞時にはハンズフリー走行も可能。ロングドライブの疲れを大きく軽減してくれるはずだ。この日はおよそ270kmを走って長野県松本市に投宿した。

高速道路から山岳路までドライバビリティは実に高い

猛暑続きだった今年の夏もひと休みなのか、2日目の天候は幸いにも曇り空。時おり小雨もぱらつくが気温は低めでむしろ快適。また湿った路面はスバルAWDの実力を図る上で好都合ともいえる。

[ 長野・大町市 ] 大糸線の線路を見てみたいと道草をしていると偶然、新宿発の南小谷行き特急「あずさ5号」が駆け抜けて行った。

この日は、大町を経て一般道を北上。JR大糸線、そして姫川に沿ってまずは糸魚川を目指す。せっかく来たのだからとスキー場のメッカである白馬八方や栂池高原あたりに寄り道をする。昼食にどこかいいお店がないかと探すと、幸いに営業中のそば処があったので入る。ここは手打ちそばだけではなく、ジンギスカンも名物メニューとのことで、思わずどちらもオーダーしてしまう。

その寄り道の最中に出会ったワインディングロードでは、WRX S4の優れたハンドリングを見極めることができた。そこまでの印象を率直に述べれば、GT-H EXは長いサスペンションストロークを生かしたゆったりした乗り心地が特徴的で路面のゴツゴツ感を吸収するのも上手い。

対するSTI スポーツR EXは、ホイールの位置決めが正確なほか、高速域では強力なダンパーがフラットな姿勢を厳密に維持してくれるものの、低速域では路面からの振動を正直に拾う傾向が強く、快適性の点ではGT-H EXに一歩及ばなかった。

ところがワインディングロードでは、STI スポーツR EXの強力なダンパーがシャープな回頭性を実現。しかも、ボディをフラットに保ち続けるので4輪の接地荷重が常に均等に揃えられ、安定したグリップを生み出してくれた。簡潔に表現すれば、とびきりレスポンスが良好なのに安心感の強いハンドリングを堪能できたのだ。

一方のGT-H EXは、安心感に優れているのだが、サスペンションストロークがたっぷりしているため、素早いコーナリングでは操舵してから実際にターンインが始まるまで本当にわずかな「間」が認められる。

もちろん、この程度の「間」は日常的な運転ではまったく感じられないはずで、たとえ積極的なコーナリングを試しても、ドライバー自身がかなり感度を上げて走らない限り気づかないレベルだ。したがって快適性を重視するドライバーにはGT-H EXを、ワインディングロードでのハンドリングに重きを置くドライバーにはSTI スポーツR EXがお勧めといえる。

旅の醍醐味を満喫して実感したロングドライブの疲れにくさ

2日目の宿泊地は富山と決まっていた。「そういえば、富山にはかつての同僚が住んでいるはず・・・」。そう思って連絡を取ってみると、彼女の仕事が終わるタイミングと我々の撮影のスケジュールがぴたりと合って、親不知あたりで再会できることになった。これも旅の醍醐味といえるだろう。

[ 富山・魚津市 ] 2日目の天候は曇り〜雨天だったので夕陽を見ることは断念していたが幸運にも何とか日本海の残照を体感できた。

聞けば、首都圏で長く続けてきた編集・執筆業にひと区切りをつけ、いまは地元・富山で農業を学び、ブルーベリー園の設立を目指して準備中という。彼女のアクティブな生き方に強い刺激を受けた取材班は、「もうすぐ陽が沈んじゃいますよ」という彼女の言葉でハッと我に返り、慌てて日没のシーンを目指したのである。

そう、今回の旅の目的のひとつに「日本海の落陽に臨む」があった。幸い、西の空は雲に切れ間があり、赤い空が見えている。魚津市の海岸沿いで撮影ポイントをなんとか探し出し、カメラマンが手早く撮影してくれたおかげで日本海の美しい残照を捉えることができた。WRX S4の軽快なフットワークに深く感謝しつつ、取材班は富山に向けて走り続けた。

宿に到着したのは夜8時半過ぎで、目指す回転寿司店はすでに閉店していたが、それでも近くの居酒屋で海産物に舌鼓を打ち、幸せな心持ちで眠りについた。

3日目、取材班はさらに西を目指して能登半島国定公園の雨晴海岸で美しい景色を写真に収めた。ここでWRX S4の直進性について触れておくと、高速道路ではクルマ自身が進んで直進しようとするだけでなく、荒れた路面でもハンドルを修正する必要性がほとんどない点も印象的だった。これこそ、スバルの技術者が語っていた「水平対向エンジンの生み出す直進性」なのかもしれない。

また、ペダルレイアウトにオフセットが少ないため、腰をひねることなくドライブできる点も疲労軽減に役立っている印象だ。あたり前のことながら、この辺を実現できているクルマが意外と少ないのが実情といえる。

取材班は石川県の長手島で撮影を終えた後、近くの食堂で名物の岩牡蠣を奮発してから一路、東京へと戻った。最終的に車両を返却するまでに走った距離は1000km強。2日半という日程で、WRX S4の「ロングドライブで疲れにくい性能」を満喫できたことは事実だ。そしてここに、シンメトリカルAWDやアイサイトというスバル独自のテクノロジーが貢献していたのも明らかである。

そして我々は改めて思ったのである。「ロングツーリングもまた、楽しからずや」と・・・。(文:大谷達也/写真:永元秀和)

■スバル WRX S4 STI スポーツR EX 主要諸元

●全長×全幅×全高:4670×1825×1465mm
●ホイールベース:2675mm
●車両重量:1600kg
●エンジン:対4DOHCターボ
●総排気量:2387cc
●最高出力:202kW(275ps)/5600rpm
●最大トルク:375Nm/2000-4800rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・63L
●WLTCモード燃費:10.8km/L
●タイヤサイズ:245/40R18
●車両価格(税込):477万4000円

■スバル WRX S4 GT-H EX 主要諸元

●全長×全幅×全高:4670×1825×1465mm
●ホイールベース:2675mm
●車両重量:1590kg
●エンジン:対4DOHCターボ
●総排気量:2387cc
●最高出力:202kW(275ps)/5600rpm
●最大トルク:375Nm/20000-4800rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・63L
●WLTCモード燃費:10.8km/L
●タイヤサイズ:245/40R18
●車両価格(税込):438万9000円

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