高田瞽女研究の草分け 故・市川信次さん 大手町の自宅から取材テープ 杉本キクイさんの歌声や語りも

 高田瞽女研究の草分けで民俗学者の故・市川信次さんによる取材テープがこのほど、上越市大手町の市川家で見つかった。孫の野村さやかさん(50、金沢市)が整理と保存に取り組んでいる。

数十年ぶりに発見された取材テープと野村さん(23日、上越市大手町の市川家で)

◇孫・野村さやかさん 整理と保存活動
 見つかったテープはカセットテープ43本とオープンリールテープ13本。昭和30年代後半から40年代にかけて録音されたもの。高田瞽女最後の親方、杉本キクイさんの歌や民話の語りをはじめ、民俗学者として全国各地で取材した際や、テレビやラジオの瞽女関連番組などが入っている。
 テープは段ボール箱に入った状態で、市川家の車庫の棚に置かれていた。野村さんによると、信次さんの長男で児童文学者の故・市川信夫さんも箱の存在を知っていたが、中身を確認することなく20年以上眠っている状態だったという。今年8月上旬に野村さんが帰省した際に箱を開け、貴重な資料の再発見となった。
 信次さんが集めた膨大な資料は昭和56年、同市大貫の自宅の火災によりほとんどが焼失。テープは奇跡的に焼け残ったものとみられる。
 テープは状態が非常に良く、ケースのラベルに書かれた信次さん手書きの文字もはっきりと読める。一部は日本で最初に製造された製品で、録音内容だけでなく、カセットテープ自体も歴史的価値があるという。「杉本キクイ演奏録音集」と彫られたゴム印や、録音に用いたとみられるマイク、イヤホンなども併せて見つかった。
 野村さんはカセットテープの録音内容をデジタル音源に再録。オープンリールについては今後、専門業者に依頼してのデジタル化を検討している。「まずは保存を第一に。著作権や(取材対象の)ご遺族の意向もあるので、活用はそれから考えたい」と野村さんは話す。

24日に開かれたイベントの中で発見を報告。テープの一部を再生した

 24日に同市本町7のきものの小川で開かれたイベント「市川信夫先生を語る」(NPO法人高田瞽女の文化を保存・発信する会主催)の中で、再発見の報告を兼ねて音源の一部が披露された。従来知られていた音源よりも若々しい杉本さんの歌声や語りの声に、参加者から驚きと感動の声が上がった。

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