大隈重信と鉄道

 佐賀県が生んだ近代の偉人、大隈重信。首相を2度務め、早稲田大の創立など業績は数え切れない。鉄道敷設もその一つ▲大隈は明治維新直後、新政府の要職に抜てきされ、鉄道事業を強力に推進した。日本発展には鉄道が不可欠、との強い信念からだ▲まず東京-横浜間の鉄道敷設を計画するが、西洋文明を嫌う反対派の激しい抵抗に遭い、用地提供を拒否された。だが大隈は屈しない。何と東京湾の海上に2.7キロにわたり堤を築くよう命じ、その上に線路を通した▲そして1872年10月14日、新橋-横浜間に日本初の鉄道が開業した。日本の近代化に大きく貢献し、現代の暮らしに欠かせない鉄道を生んだのは、大隈の進取の精神と言っていい▲大隈は幕末に長崎へ出て宣教師フルベッキから英語と米国憲法を学んだ。五島町に英学校「致遠(ちえん)館」を開き、教壇にも立った。世界の情勢を知り維新後の飛躍につなげたのだ。大隈が長崎で学んでいなければ日本鉄道の発展は随分と遅れていただろう▲大隈の没後100年と鉄道開業150年に当たる節目の年に西九州新幹線が開業した。「長崎は第二の故郷。長崎の山水、気候、食、生活のしやすさを非常に愛する」と語った大隈。古里佐賀と愛する長崎を結ぶ高速鉄道の開通を心から喜んでいるに違いない。(潤)

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