“世界一のプレー”が観客を魅了した。10月末の第22回全国障害者スポーツ大会「いちご一会とちぎ大会」を見据え、本県の車いすバスケットボールチーム「栃木レイカーズ」が25日、宇都宮市のわかくさアリーナで強豪の「パラ神奈川SC」と強化試合に臨んだ。タイ・プーケットで16日に行われたU23(23歳以下)の世界選手権で初優勝した高松義伸(たかまつよしのぶ)選手(22)=小山市出身=と、日本代表のエース鳥海連志(ちょうかいれんし)選手(23)らが白熱の戦いを繰り広げ、会場を沸かせた。
試合開始と同時に、「キュッキュッ」とタイヤの摩擦音が響いた。瞬く間に攻守が切り替わり、車いすが金属音を立てて激しくぶつかり合う。観客ら約50人は好プレーの度にメガホンを叩き、エールを送った。
栃木の高松選手と神奈川の鳥海選手は、昨夏の東京パラリンピックで銀メダルを獲得。プライベートでも親しい2人が、真剣勝負に汗を流した。
試合は開始直後に栃木がリードしたものの、逆転を許し終始追いかける展開に。高松選手のミドルシュートなどで得点を重ね猛追したが、54対59で惜敗した。
栃木は高松選手が最多の20得点、両チーム全体では鳥海選手の30得点が最多だった。客席からは全員に温かな拍手が送られた。
昨年、栃木のスポンサー企業になった栃木市のレストラン「肉のふきあげ栃木本店」の小池仁実(こいけひとみ)さん(34)は娘2人と観戦。「すごいの一言。音の迫力に圧倒された」と感激した。
試合前に行われた世界一を祝うセレモニーでは、宇都宮市昭和小4年の阿部結多(あべゆうた)君(10)が高松選手に花束を手渡した。「試合中は遠くからパスを回す姿が格好良かった」と目を輝かせた。
小学2年から車いすバスケに打ち込む同市旭2丁目、通信制高校2年の生尾紀壮(なまおのりまさ)さん(16)は「鳥海選手は難しいシュートをいくつも決めてさすがだった」と振り返った。
試合後、高松選手は「障害者スポーツへの理解を深めたい。障スポは勝ちにいく」と強調。鳥海選手は「車いすバスケは体感してもらうことが重要」と語り、裾野拡大に期待を込めた。