劇作家・横山拓也新作 演劇『夜明けの寄り鯨』上演

いま演劇界で注目の劇作家・横山拓也が新国立劇場初登場! 25年前に自分が傷つけたかもしれない男性の面影を追う、 一人の女性のこころの物語。12月上演。

劇作家・横山拓也の新作、ひとのこころの内面を静かに描く、まさに横山拓也ならではの 劇世界。
演出は、新国立劇場では「こつこつプロジェクト」第一期として『スペインの戯曲』を手がけた、若手演出家・大澤 遊。彼の丁寧で繊細な演出でこの作品の奥深い魅力を引き出していく。 出演は小島聖、池岡亮介ら実力派。

横山拓也より
年に何回か、鯨が岸に打ち上げられるニュースを見て、小さく興奮する自分がいます。大 型哺乳類の命の消失に触れてショックを受けると同時に、あの大きな躯体がいつのまにか砂 浜に辿り着いたという事象に、ミステリとロマンを感じてしまうのです。鯨の座礁は、海洋 汚染などの環境問題や船舶の騒音による影響が原因とも言われますが、最近では「ソナー(音 波探知)の錯乱」による例がもっとも多いと報告されています。鯨やイルカは、音波を出し てその跳ね返りで自分の位置を把握するという話を耳にしたことがあると思います。その能 力が地磁気の等高線と遠浅の直行線とが交差するところで錯乱が起きて座礁する例が多い そうです。説明を聞いてもよくわかりません。この座礁した鯨のことを「寄り鯨」と呼ぶこ とを知りました。日本ではその昔「鯨一頭で七浦が潤う」といって、浅瀬に上がった寄り鯨 を捕らえて、その恩恵をみんなで分け合う地域もあったそうです。今回はじめてご一緒する 大澤さんと「どんな作品にしましょうか」とやりとりする中で、座礁鯨のモチーフを提案し たところ面白がってくれたので、「迷う」「探す」「地図」などの要素をもって書くことに しました。楽しみしかなくて気持ちが逸りますが、筆が座礁しないように、慎重に執筆に取り組みたいと思います。

大澤 遊より
既成の台本をもとに創作することの多かった僕が、新作の演出のチャンスをいただけた、 まず素直に嬉しいです。さらに様々な劇場でお名前をよく目にする横山拓也さんの新作。楽しみで仕方ありません。横山さんとざっくばらんにお話ししている中から、いくつかのイメ ージが生まれて来ました。それがこの創作の始まりです。いま横山さんがセリフを紡いでく れているところです。以前、恩師である宮田慶子さんに作家が机に向かっている姿を後ろか ら見たときに、声を掛けられなかったと伺ったことがあります。作家がセリフを紡ぐ作業、 物語と向き合う作業は、大袈裟にいうと命を削る作業なのかもしれません。いま僕にできる ことは作家さんと並走すること。ただ見守ることしかできないかもしれませんが。横山作品 の魅力のひとつは、どの登場人物もしっかりと生きている、もしくは生きていたこと。書き 上がった物語を、一緒に向き合う仲間たちと丁寧に立ち上げていきたいと思います。地図を 頼りに「生きている」ということを大事にして。余談ですが、保育園で僕のものだとわかる ように貼られていたシールが鯨だったことをふと思い出しました。小さい頃から鯨と縁があ るようです。

あらすじ
和歌山県の港町。手書きの地図を持った女性が 25 年ぶりに訪れる。女性は大学時代、この 港町にサークルの合宿でやってきて、たまたま寄り鯨が漂着した現場に居合わせた。まだ命 のあった鯨を、誰もどうすることもできなかった。 ここは江戸時代から何度か寄り鯨があって、そのたびに町は賑わったという。漂着した鯨は “寄り神様”といわれ、肉から、内臓、油、髭まで有効に使われたと、地元の年寄りたちから 聞いていた。 女性が持っている地図は、大学の同級生がつくった旅のしおりの1ページ。女性はその同級 生を探しているという。彼女はかつて、自分が傷つけたかもしれないその同級生の面影を追 って、旅に出たのだ。地元のサーファーの青年が、彼女と一緒に探すことを提案する。

<演劇『夜明けの寄り鯨』公演概要>
会場:新国立劇場 小劇場
公演日程:2022年12月1日(木)~18日(日)
作 横山拓也
演出 大澤 遊
キャスト:
小島 聖 池岡亮介 小久保寿人
森川由樹 岡崎さつき 阿岐之将一
楠見 薫 荒谷清水

芸術監督 小川絵梨子
主催 公益財団法人新国立劇場運営財団、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
公演URL:https://www.nntt.jac.go.jp/play/beaching-at-dawn/
問い合わせ:新国立劇場ボックスオフィス:03-5352-9999(10:00~18:00)
新国立劇場公式さサイト:https://www.nntt.jac.go.jp

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