怖い…スピード出す車、ごった返す人々の中を通過 駅周辺で毎年事故、解決へ二転三転 ガードレールなし

城西大の職員(右)が注意喚起のボードを掲げる中、キャンパスに向かう学生たち。すぐ脇を車が何台も通過していった=22日午前9時ごろ、毛呂山町下川原(画像の一部を加工しています)

 埼玉県毛呂山町下川原の東武越生線川角駅周辺で、危険な道路が長年の懸案となっている。付近には学校が複数立地。駅前は道幅が狭く、ロータリーもないため、徒歩の学生らと接触しそうになりながら車両がすり抜けていく。近年、町は整備案を示し、課題解決の具体化に動き出したものの二転三転。川角駅周辺地区整備協議会を設けて議論を進めているが、早期の事業着手につながるかは見通せない。

 9月下旬となり、大学の後期授業が始まって学生が戻ってきた。22日朝、駅に電車が着くと、下車した通学客らでごった返す。頻繁に行き交う車やバイク、自転車。城西大3年生の女子学生(22)は「スピードを出す車もあって怖い。早く安心して歩ける道になってほしい」と願う。

 川角駅は城西大、城西短大、明海大(以上坂戸市)、日本医療科学大、埼玉平成中学、高校(以上毛呂山町)の学生や生徒が利用する。駅の1日平均乗降客数(2021年度)は1万1510人。越生線7駅で突出している。

 ところが、駅の東を南北に貫く主要な町道は中央線がなく、歩道やガードレールも付いていない。駅も手狭で、改札口は北側の上りホームに直結する1カ所。大学はいずれも駅南側にキャンパスがあるため、学生数が多い城西大(約7500人)と日本医療科学大(約1500人)の1限を控えた午前8時半ごろから9時すぎにかけては、踏切前の路上からホームまで滞留。最も危ない状態になる。

 学生と車両の接触事故は、ほぼ毎年あるという。両大学は朝に職員と警備員を配置。町や東武鉄道にも改善を要望してきた。城西大の藤野陽三学長は「駅や周辺の道路が利用客数に対して狭すぎる」と指摘。同大は19年2月に町と協定を結び、整備費として3億5千万円を寄付した。

 駅周辺の交通問題では、1975年ごろから住民の陳情などが行われてきた。事態が動いたのは平成の終盤。2016年11月、第1回地権者説明会が開かれた。町は駅南側にも改札口開設を模索したが、東武鉄道の難色で断念。18年2月の説明会では橋上駅舎化の検討を明らかにしたものの、町財政では約17億円の整備費を賄えず頓挫した。

 その後、改札口を駅南側に移転する周辺整備案をまとめ、城西大との協定と同時期の19年度一般会計当初予算案に関連費計1億1151万円を計上、可決。だが、計画を知った住民から「学生のための整備」などと強い反発が起き、撤回に追い込まれた。

 こうした経緯や請願を受け、町は住民と各校の関係者、識者らで構成する川角駅周辺地区整備協議会を設置。昨年12月から5回の会議を行ってきた。まちづくり整備課は「まずは協議会で意見を聞き切り、解決へつなげたい」と慎重に進める姿勢を示す。

 ただ、危険は進行形だ。日本医療科学大の新藤博明学長は「地元の人が、いつ重大事故の加害者になってもおかしくない。少しでも早く安全を実現するのが、一番大切ではないか」と強調。第6回協議会は、27日に開かれる。

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