見えてくる課題… 原爆小頭症“最も若い被爆者” 76歳の誕生会 

母親の胎内で被爆し、重い障害を負って生まれた原爆小頭症の被爆者たちの会「きのこ会」が、76歳を祝う集いを開きました。集まりたくても集まれない…。重い課題が見えています。

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最も若い被爆者が76歳になりました。原爆小頭症は、妊娠早期の胎児が強力な放射線を浴びたことによって起こる障害です。頭が小さいことが特徴で、多くが脳や体に障害を負っています。

原爆小頭症被爆者と家族の会「きのこ会」では、オンラインを併用して76歳の誕生会を開きました。

コーディネーターは支援者で俳優の斉藤とも子さんが務めました。斉藤さんは、1人ひとり小頭症被爆者たちの近況を聞きました。

原爆小頭症(入所施設で生活) 賀村 春男 さん
「ここでがんばってやりよるんですが、家に帰られんのです。コロナ禍になっとるけん」

原爆小頭症(アパートで一人暮らし) 川下 ヒロエ さん
「元気?」

原爆小頭症(入所施設で生活) 戸田 初美 さん
「元気よ」

川下 ヒロエ さん
「会いたいね」

戸田 初美 さん
「会いたいね」

家族をすべて亡くし、施設で暮らす会員は、さびしさを訴えました。

原爆小頭症(入所施設で生活) 茶和田 武亜 さん
「不安なんよね」

支援者(俳優) 斉藤 とも子 さん
「元気でいてね。また会いましょうね。また、茶和田さん、見ていてくださいね。まだ終わりじゃないからね。みなさんもあっちのカメラで茶和田さんに」

きのこ会では、ほとんどの会員が健康に不安を抱えています。

きのこ会では、この1年間に2人の会員が亡くなりました。

会員たちは、きのこ会で仲間と会うことを心待ちにしながら毎日を過ごしています。

横浜の会員はことし、2年ぶりに参加する予定でしたが、台風14号の影響で断念しました。

小頭症被爆者の妹 中井 葉子 さん
「(兄は)なによりも広島に行くのを楽しみにしていたのに。毎日のように『広島に行きたい。みんなに会いたい。会いたい』って言っていたんですね。それが台風になっちゃって」

コロナ禍で会うこと自体が制限された時間が長く続いています。支援者たちにとっても苦い思いが続いています。

支援者(元原爆小頭症専任相談員) 河宮 百合恵 さん
「わたしのことを覚えている?って聞いたら、『だいぶ長いことじゃけんね』って言って、『覚えとらん』と言ったんです。まずいなとわたしは思いまして。これからは会いに行こうと思いました」

原爆投下から77年。会員の多くは自由に動くことができません。最も若い被爆者たちの活動は今、転機を迎えています。

支援者(胎内被爆者) 寺尾 文尚 さん
「わたしたちはきのこ会の人たちの生きざまを通して、平和の大切さをしっかりと訴えていかなければいけないだろうと思います」

「ただ、平和の反対は戦争だけではありません。差別や偏見、それから人権侵害・貧困、多くのものがあります」

「こうしてたくさんの仲間が一緒になって考えていけるってことは、きのこ会の大切な役割だと思います」

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