出産育児一時金、児童手当、育児休業給付金…。子どもができたら知りたい公的補助と注意したほうがよいこと

出産そして子育てに関しては、国や自治体でさまざまな支援制度を設けています。これらの支援制度を利用するためには、自分から申請しなければなりません。せっかく利用できる制度があるのに、利用しないのはもったいないですよね。今回は出産および子育てに関する支援制度の概要について、申請方法も合わせて解説します。


出産育児一時金

出産に関わる費用については、原則として健康保険の適用外になるため、多額な費用がかかります。しかし、出産については、加入している健康保険組合から給付を受けられます。

・出産育児一時金の概要

妊娠4ヵ月以上の人が正常分娩で出産した際には、こども1人につき42万円の出産育児一時金が支給されます。また、出産育児一時金は、病院によって健康保険組合が医療機関に対して、出産一時金を支払う「直接支払制度」を採用しているところと、医療機関が被保険者に代わって出産育児一時金を受け取る「受取代理制度」を採用しているところがあります。出産する病院がどちらの制度を採用しているかで利用する制度が異なりますので、そのどちらを利用するか、もしくは、加入している健康保険組合に直接請求するかは被保険者側で選択できます。

健康保険組合に請求する場合は、出産にかかる費用をいったん自分で負担しなければなりません。しかし、直接支払制度を選択することで、健康保険組合から医療機関に直接出産にかかる費用が支払われますので、一時的な自己負担を軽減できる点がメリットです。

・出産育児一時金の申請方法

直接支払制度を利用する場合は、健康保険証を医療機関に掲示して、出産育児一時金の申請および受け取りにかかる代理契約を締結しなければなりません。

また、かかった医療機関が受取代理制度を採用している場合は、「出産育児一時金申請書(受取代理用)」に出産予定日を証明できる書類などを添付し、出産予定日の2ヵ月前までに健康保険組合に提出する必要があります。申請書類や申請期日については、各健康保険組合で異なりますので、事前に健康保険組合に確認しておきましょう。

加入している健康保険組合に直接請求する場合は、申請用紙が用意されていますので、用紙に「直接支払制度を利用していない」ことを証明する書類のコピーを添付して申請します。

出産手当金

出産にあたり、産前産後休暇を取得し、給与の支払がなかった場合、健康保険組合に申請することで、出産手当金を受け取れます。

・出産手当金の概要

出産以前42日から出産日の翌日以降56日までの範囲内で、産前産後休暇を取得し、給与の支払の無かった期間を対象とし、支給開始日以前1年間の平均給与日額の約3分の2が支払われます。出産が予定日よりも遅れた場合は、遅れた期間も支給対象になります。

・出産手当金の申請方法

加入している健康保険組合に「出産手当金支給申請書」を提出して請求します。申請の際には事業主の証明が必要ですので、忘れずにもらっておきましょう。

育児休業給付金

育児休業給付金は、雇用保険制度に基づいて支給されるものです。育児休業給付金の制度は2022年10月より変わりますので、ここでは改正後の内容について解説します。

・育児休業給付金の概要

原則として1歳未満の子どもを養育するために、育児休業を取得した場合、一定の要件を満たすことで育児休業給付金を受け取れます。また、子どもの出生後8週間の期間内に28日を限度に「産後パパ育休」を取得した場合も、一定の要件を満たすと出生時育児休業給付金が受けられます。

育児休業給付金および出生時育児休業給付金の支給額は以下の式で計算できます。
休業開始時の賃金日額✕休業日数✕67%(育児休業開始から181日目以降は✕50%)

ちなみに、給付金額がどのくらいになるのかについて、平均賃金月額を例に計算すると、以下のとおりになります。

・平均賃金月額が15万円の場合:約10万円(181日目以降は7万5,000円)
・平均賃金月額が20万円の場合:約13万4,000円(181日目以降は約10万円)

・育児休業給付金の申請方法

勤めている会社がハローワークに対して、必要書類をそろえて申請します。そのための社内での申請方法については、会社の就業規則などを確認してください。

児童手当

児童手当は、国が行っている子育て支援制度の一つで、中学校卒業までの児童を養育している人に対し、児童の数および年齢に応じた手当が支給されます。

・児童手当の概要

児童手当は申請することで、以下の支給額が年3回に分けて支給されます。

また、手当を受けるためには所得上限限度額未満である必要があります。

さらに、所得制限限度額以上、所得上限限度額未満の場合は、児童の年齢に関わらず一律5,000円の特別給付が行われています。2022年10月支給分からは、所得上限限度額が一定金額以上の人に対しては支給されないことになりました。

所得については、共働きの場合、現時点では所得の多い方で判断されていますが、今後見直される可能性もありますので、制度の改正に注意が必要です。

・児童手当の申請方法

児童手当を受けるためには、子どもが生まれた際や他の市区町村から転入してきた際に、住所地を管轄する市区町村の窓口に「認定請求書」を提出しなければなりません。そして、認定を受ければ、申請した月の翌月分より支給されます。そのため、子どもが生まれた時や他の自治体から転入してきた際には、早めに「認定請求書」を提出するようにしましょう。

・15日特例の活用

上で説明したとおり、児童手当の支給は、原則として申請した月の翌月分からですが、こどもが生まれた、もしくは他の自治体から転入してきてから15日以内に申請することで、申請した月分から受給できます。1日でも遅れてしまうと翌月分からの支給になってしまうため、15日特例があることを覚えておきましょう。

申請期限にも注意

産前産後の収入を補助してくれる制度はさまざまです。また、子育て支援制度の一つとして児童手当が用意されているほか、自治体独自で一定の年齢まで医療費の負担を助成する「こども医療費助成制度」を用意しています。そのほか、妊婦健診の助成や社会保険料の免除の特例なども受けられます。

ただし、これらの制度の利用にあたっては、自分で申請しなければ利用できないものがほとんどです。なかには申請期限が設けられているものもありますので、期限内に必要書類をそろえて申請するようにしましょう。

最近ではインターネットで申請できる自治体なども増えていますので、手軽に申請できる方法を選ぶとよいでしょう。

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